コンサートの記録
「日本の欠点としては先生は真に偉くなり過ぎるのが、大変に悪いことでこれがそもそもの進歩を妨げることとなり、従って生徒の上達ということにも非常なる影響を及ぼします。(こんなことは日本の方には大きな声で話すべきものではありません。全くに秘密で…
「これでしばらくは音楽会はないように言っていますが、万一また何か良いものがありましたならば、プログラムをお送りいたしましょう。 ホッホシューレ(中の人注:ベルリン高等音楽院のことだと思います)のオーケストラはあまりに上手とは思えませんでした…
㉕昨9日、シーズンの皮切りとして、ウンターデンリンデンオーパーに行きました。6時半から11時半まで5時間にわたる大物、さすがワーグナーの作だけに最後まで息を凝らして聴きました。題して「マイスタージンガー」これはレコードでもご存じでしょうが、こち…
26.いよいよシーズンで、ますます賑やかです。外は寒いので震えますが、この辺りは一寸内地と違います。内地ならば気候の良い頃かそうですが、こちらは寒くなればなるほど良くなるのですから、だいぶ変わっています。 先日は第二回としてヴェルディのDie Ma…
27.でたらめでも誰も笑ってくれる人がありませんから、今度の時は誰か連れて行って故意で内地の訳本を読んでおいて説明してやります。ドイツ語で読んだつもりで。わからないところは都合よく作曲して説明しておきます。それでも先方はきっと感心するでしょ…
〇鎌倉の絵葉書は思い出深く懐かしく拝見いたしております。毎日慰められております。 〇同封の赤切符はフィルハーモニー、黄切符は地下鉄道のものです。 (中の人注:ベルリンフィルハーモニーのチケットはありましたが、黄色い地下鉄の切符は散逸してしま…
「クロイツァー先生のトリオは音楽会シーズンの最初のもので、初めてベルリンに来て音楽会らしい良い気分に浸ることが出来ました。到着当時、ラモント氏の演奏を聴きましたが、こちらが未だ慣れないせいかあまり面白く聴くことが出来なかったのは遺憾でした…
10月13日付けに同封されていたチケットの半券の数々。 ①1928年10月4日 フィルハーモニーホール エミール・フォン・ザウアー 曲目不明。 ですが、10月3日付けの手紙でこのコンサートのチケットのことが言及されていました。規矩士は 「黄色のはザウアー氏ピア…
①1928年10月13日午後8時開演 ベートーヴェンザール バッハとリストの夕べ ピアノ:アレクサンダー・ボロフスキー(1889-1968) Alexander Borovsky - Wikipedia (日本語のものはありません) こちらのCDの紹介にかなり詳しい経歴があります。 sakuraphon.net …
(続き) 4.ベルリンも寒くなりました。相変わらず元気です。例のチースの家です。他には理想の家もないので我慢しましょう。スチームが通りますから暖かです。 27.近頃は日もだいぶつまりました。4時半になると暗くなります。11月3日の天長節はベルリン…
ベルリンで一番大きな音楽会場はフィルハーモニーで、ここで演奏される人は特別に技術の優れた人です。場所はポツダムプラッツ(中の人注:ポツダム広場)ジングアカデミーとはかなり離れています。幸いこのポツダムプラッツまで私の下宿のそばから地下鉄道…
「フィルハーモニーはベルリンの好楽家からはあまりその建物が古臭いとて良く言われませんが、私の聴いた所では決してそうではないと思いました。何程最下席になると随分横のうしろの方なので、「あれでは」とうなずかれますが、最下席の一つ上等から正面に…
かかる立派な会の(中の人注:ラフマニノフだのフルトヴェングラー指揮だのというビッグネームのコンサートのこと)以外に日曜の夜7時半から民衆音楽会があります。 これはやはりフィルハーモニーのメンバーですが、指揮者が普通の人なので、入場料もずっと…
先日はブルーノ・ワルター氏コンダクター(中の人注:指揮者)のオーケストラを聴きましたが、(勿論日曜日の午前11時半から1時半までの総練習)この日のは合唱付きと言うので大変な人でした。総練習をする音楽会は大抵よろしいので、従って入場料も高くなっ…
ティンパニ(普通鉄太鼓などと称しています)も2組あって(つまり4個並べられます)それが同時に叩かれますから全く気持ちが良く、時にはティンパニだけのソロがあったりして実に愉快です。内地ではよく高折氏(中の人注:高折宮次氏のこと。東京音楽学校ピ…
合唱付きのオーケストラには、かなり多くの人が出演しました。女声合唱にドームの子どもの合唱が加わり、近頃には珍しい面白いものでした。合唱人数は全体で250人位だったと思います。それに大勢のオーケストラが伴うのですから、その賑やかなこと、さしもの…
「オーケストラの感じ、音の具合等、筆ではちょっと言えませんから、いずれ帰国次第に詳しく申し上げることにして、ここでは目に見えたことをお話しすることにします。 総練習の時はオーケストラの部員の服装は通常服で、これは上野と変わりません。先日の合…
何もわからない我が同胞諸君の中でのある人があの8つのコントラバスを聴いてすっかり感心してしまい、 「まるで飛行機のプロペラがうなっている様だ」と申されました。 全くその通りです。うなると言うのが本当に当たっています。普通に鳴るのではなく、その…
ベートーヴェンザール(中の人注:ザールとはドイツ語でホールのこと。)は横浜記念会館を少し大きくしたくらいで、聴くのには丁度良いホールでしょう。相当の人は皆、以上に上げた(ジングアカデミー、フィルハーモニー、ベートーヴェンザール)ホールで演…
ラフマニノフ氏の独奏会は8日の金曜日、フィルハーモニーで開かれました。 この日は時間の都合で少し遅くなりましたので、自動車で飛ばしましたが、良い具合に間に合いました。(自動車についてはまた面白いことがありますが、紙面の都合でお預かりとします…
(中の人注:ラフマニノフの演奏会の曲目について。) 今、左に記すとまず第一が バッハ-ブゾーニ:Zwei Orgelchoral-vorspiele 【Bach-Busoni - The Complete Nine Chorale Preludes】 www.youtube.com (中の人注:バッハーブゾーニ:9つのコラール前奏曲…
日本でリストをやる者は、こと一番主眼とする神々しい荘厳なる音については少しも注意を払われぬことです。かかる人のリストは、リストの音を巧みに出すだけで、真実のリストを弾くものではなく、それをもって完全にリストが弾けたと思われたら「大間違い」…
投稿110,111のラフマニノフの演奏を聴いた感想の続きがこの手紙のようです。 「ショパンのファンタジーf-mollはこちらではいろいろの人が演奏します。クロイツァー先生も時々弾かれるので、深く印象しております。ラフマニノフ氏の演奏を聴いて、何程良いと…
(いよいよラフマニノフとフルトヴェングラーの感想ですよ!) ラフマニノフ氏のコンチェルトd-mollは最近に内地でシャピロ氏が演奏されたようですが、自作自演のコンチェルトはとても話以上で、私もベルリンに来て初めてコンチェルトで感動したのはこの時で…
(この稿はピアニスト・ピアノ研究家の松原聡様にご教示いただきました。松原様ありがとうございました。) 規矩士は1928年11月8日(9日かもしれない。残されていたチケットは9日と書いてある。日にちが違うのは規矩士の勘違いかもしれない)にラフマニノフ…
4.井口君が病気とは驚きました。未だ何とも通知がありませんが、こちらからお見舞いしましょう。 5.豊増君も勉強と聞いて安心しました。 42.豊増氏にもそのうちに出します。受験法がさだめしうるさいでしょう。自分の果たせることはやってあげておいて…
チケットの半券が複数の手紙に同封されていました。しかし日にちなどがかなりごちゃごちゃになっていて、同じコンサートのものが別の封筒に入っていたりしているようです。几帳面と伝えられ、実際に「几帳面だった」と思われる規矩士。割と揃えて送っていた…
1928年11月1日(木)開始時間不明 フィルハーモニーホール ピアノ:モーリツ・ローゼンタール(1862ー1946) 曲目不明 ポーランド出身のピアニスト。ショパンの弟子だったカロル・ミクリと、リストに師事。超絶技巧かつ詩情豊かな演奏をした。 www.youtube.co…
4.今年度の新しい留学生の御方が来られたならば、大いにお世話をしてあげましょう。音楽学校では誰でしょうか?早く決まればその御方に御便利をお計りしたいのですが。 (中の人ツッコミ) 規矩士先生、次にいらっしゃるのは規矩士先生と親しい方ですよ。お…
1928年11月11日は昼間はフルトヴェングラー指揮ベルリンフィルのゲネプロを聴きに行き、夜は弦楽四重奏団を聴きに行ったようです。はしごをしました。 1928年11月11日(日)午前11時30分 フィルハーモニーホール フルトヴェングラー指揮ベルリンフィルハーモ…