ベルリンで出会った音楽家たち

6.昭和3年5月16日1 笈田光吉、クロイツァー教授のレッスン

この日の残されている手紙は、いきなりクロイツァー教授の話となっています。文章の流れからもう一枚あったのでは?と思いますが、古い話です。散逸してしまったのかもしれません。長い年月が経っているので、仕方がないです。 レオニード・クロイツァー ja.…

7.昭和3年5月16日2 音楽教授としての心構え。そしてシュナーベルの演奏会に行きました。

「日本の欠点としては先生は真に偉くなり過ぎるのが、大変に悪いことでこれがそもそもの進歩を妨げることとなり、従って生徒の上達ということにも非常なる影響を及ぼします。(こんなことは日本の方には大きな声で話すべきものではありません。全くに秘密で…

76.昭和3年9月24日2 ドイツのピアノ事情。マイスタージンガーのチケット?クロイツァー教授のトリオのチケット

〇御通信は全部落手。こちらのも全部着く由。まず安心。無理をせぬよう注意しておりますから、ご安心を。事件は当分様子を見ます。 〇景色の良い所は一度でも見せたいと思います。本当の音楽もせめて出来るならばと希望する程です。日本ではとても悲しいかな…

88.昭和3年10月13日6 クロイツァー先生のトリオを聴いて。規矩士のトリオ論1

「クロイツァー先生のトリオは音楽会シーズンの最初のもので、初めてベルリンに来て音楽会らしい良い気分に浸ることが出来ました。到着当時、ラモント氏の演奏を聴きましたが、こちらが未だ慣れないせいかあまり面白く聴くことが出来なかったのは遺憾でした…

91.昭和3年10月13日9 同封されていたチケットの半券たち1(ザウアー、オルロフ、ベルリンフィル、バロコヴィッチ)

10月13日付けに同封されていたチケットの半券の数々。 ①1928年10月4日 フィルハーモニーホール エミール・フォン・ザウアー 曲目不明。 ですが、10月3日付けの手紙でこのコンサートのチケットのことが言及されていました。規矩士は 「黄色のはザウアー氏ピア…

92.昭和3年10月13日9 同封されていたチケットの半券たち2 (ボロフスキー、スレザーク、バロコヴィッチ)

①1928年10月13日午後8時開演 ベートーヴェンザール バッハとリストの夕べ ピアノ:アレクサンダー・ボロフスキー(1889-1968) Alexander Borovsky - Wikipedia (日本語のものはありません) こちらのCDの紹介にかなり詳しい経歴があります。 sakuraphon.net …

102.昭和3年11月5日6 ベルリンフィルハーモニーの話2。フルトヴェングラー指揮ピアノはラフマニノフのコンサートはチケット代が高額!

「フィルハーモニーはベルリンの好楽家からはあまりその建物が古臭いとて良く言われませんが、私の聴いた所では決してそうではないと思いました。何程最下席になると随分横のうしろの方なので、「あれでは」とうなずかれますが、最下席の一つ上等から正面に…

103. 昭和3年11月5日7 ベルリンフィルハーモニーの話3。民衆音楽会。フィルハーモニーの前売りチケット事情。

かかる立派な会の(中の人注:ラフマニノフだのフルトヴェングラー指揮だのというビッグネームのコンサートのこと)以外に日曜の夜7時半から民衆音楽会があります。 これはやはりフィルハーモニーのメンバーですが、指揮者が普通の人なので、入場料もずっと…

104. 昭和3年11月5日8 ベルリンフィルハーモニーの話4。ブルーノ・ワルター。フィルハーモニーホールの話。

先日はブルーノ・ワルター氏コンダクター(中の人注:指揮者)のオーケストラを聴きましたが、(勿論日曜日の午前11時半から1時半までの総練習)この日のは合唱付きと言うので大変な人でした。総練習をする音楽会は大抵よろしいので、従って入場料も高くなっ…

105.昭和3年11月5日9.ベルリンフィルハーモニーの話5。「ベルリンフィルのティンパニは不思議なくらい上手なのです」「パイプオルガンは至る所にあるから珍しくないです。」

ティンパニ(普通鉄太鼓などと称しています)も2組あって(つまり4個並べられます)それが同時に叩かれますから全く気持ちが良く、時にはティンパニだけのソロがあったりして実に愉快です。内地ではよく高折氏(中の人注:高折宮次氏のこと。東京音楽学校ピ…

106.昭和3年11月5日10 ベルリンフィルハーモニーの話6.合唱付きのコンサートに行った。「某氏がヴァイオリンをやめたのももっともなことです。」

合唱付きのオーケストラには、かなり多くの人が出演しました。女声合唱にドームの子どもの合唱が加わり、近頃には珍しい面白いものでした。合唱人数は全体で250人位だったと思います。それに大勢のオーケストラが伴うのですから、その賑やかなこと、さしもの…

107.昭和3年11月5日11 ベルリンフィルハーモニーの話7。ゲネプロの時の服装とか。団員はクローン先生のような男性ばかりです。

「オーケストラの感じ、音の具合等、筆ではちょっと言えませんから、いずれ帰国次第に詳しく申し上げることにして、ここでは目に見えたことをお話しすることにします。 総練習の時はオーケストラの部員の服装は通常服で、これは上野と変わりません。先日の合…

108.昭和3年11月5日12 ベルリンフィルハーモニーの話8。うなるオーケストラの話。

何もわからない我が同胞諸君の中でのある人があの8つのコントラバスを聴いてすっかり感心してしまい、 「まるで飛行機のプロペラがうなっている様だ」と申されました。 全くその通りです。うなると言うのが本当に当たっています。普通に鳴るのではなく、その…

110.昭和3年11月15日2 規矩士はラフマニノフの実演を聴きました!! 1

ラフマニノフ氏の独奏会は8日の金曜日、フィルハーモニーで開かれました。 この日は時間の都合で少し遅くなりましたので、自動車で飛ばしましたが、良い具合に間に合いました。(自動車についてはまた面白いことがありますが、紙面の都合でお預かりとします…

111.昭和3年11月15日3 規矩士はラフマニノフの実演を聴きました!! 2

(中の人注:ラフマニノフの演奏会の曲目について。) 今、左に記すとまず第一が バッハ-ブゾーニ:Zwei Orgelchoral-vorspiele 【Bach-Busoni - The Complete Nine Chorale Preludes】 www.youtube.com (中の人注:バッハーブゾーニ:9つのコラール前奏曲…

116.昭和3年12月2日1 ラフマニノフの独奏会の感想の続き。チャイコフスキーのトロイカ

投稿110,111のラフマニノフの演奏を聴いた感想の続きがこの手紙のようです。 「ショパンのファンタジーf-mollはこちらではいろいろの人が演奏します。クロイツァー先生も時々弾かれるので、深く印象しております。ラフマニノフ氏の演奏を聴いて、何程良いと…

117.昭和3年12月2日2 ラフマニノフとフルトヴェングラーとベルリンフィル!!

(いよいよラフマニノフとフルトヴェングラーの感想ですよ!) ラフマニノフ氏のコンチェルトd-mollは最近に内地でシャピロ氏が演奏されたようですが、自作自演のコンチェルトはとても話以上で、私もベルリンに来て初めてコンチェルトで感動したのはこの時で…

118.昭和3年12月2日3 「楽譜を見ながらコンサートを聴く人っているんですよね。」柳兼子の独奏会(規矩士は行かなかった)

残念なことは、こんなに良いものでも日本人で「是非聴こう」と言うものは音楽家以外にまあほとんどないと見てよろしいでしょう。ベルリンにも相当日本人はおりますが、いつもいつも今少し趣味があってよかりそうなものと思っています。中にはお誘いをしても…

119.(余談)規矩士が聴いたラフマニノフ

(この稿はピアニスト・ピアノ研究家の松原聡様にご教示いただきました。松原様ありがとうございました。) 規矩士は1928年11月8日(9日かもしれない。残されていたチケットは9日と書いてある。日にちが違うのは規矩士の勘違いかもしれない)にラフマニノフ…

121.昭和3年12月24日2 すみ君へクリスマスのお便り2 東京音楽学校の動静。

4.井口君が病気とは驚きました。未だ何とも通知がありませんが、こちらからお見舞いしましょう。 5.豊増君も勉強と聞いて安心しました。 42.豊増氏にもそのうちに出します。受験法がさだめしうるさいでしょう。自分の果たせることはやってあげておいて…

122.昭和3年12月24日3 すみ君へクリスマスのお便り3 クロイツァー先生の話題。

3.真善美、なるほどその通りです。けれども世の中は自分が思う通りに行くと思うと間違いです。そう簡単には行きません。すべての人が真善美を心得てくれるならば、世の中は全く都合が良いのですが、そこが世の中でなかなかそうはなりません。ハエゼン女史…

128.(余談)チケットの半券たち1 ヴェチェイ、ウンガー、パウアー、フォイアマン、タウベ(オネゲルを聴く)、ベアトラム(バートラム)、レヴィーン

チケットの半券が複数の手紙に同封されていました。しかし日にちなどがかなりごちゃごちゃになっていて、同じコンサートのものが別の封筒に入っていたりしているようです。几帳面と伝えられ、実際に「几帳面だった」と思われる規矩士。割と揃えて送っていた…

129.(余談)チケットの半券たち2 ローゼンタール、E・フィッシャー、パウアー、ブルーメン、ヴェチェイ、アゴスティ、マイラ・ヘス

1928年11月1日(木)開始時間不明 フィルハーモニーホール ピアノ:モーリツ・ローゼンタール(1862ー1946) 曲目不明 ポーランド出身のピアニスト。ショパンの弟子だったカロル・ミクリと、リストに師事。超絶技巧かつ詩情豊かな演奏をした。 www.youtube.co…

132. 昭和4年1月13日3「すみ君へ」3 東京音楽学校や音楽界の雑談。「大禮奉祝演奏会(ミサ・ソレムニス)」モイセイヴィチ、シロタ

4.今年度の新しい留学生の御方が来られたならば、大いにお世話をしてあげましょう。音楽学校では誰でしょうか?早く決まればその御方に御便利をお計りしたいのですが。 (中の人ツッコミ) 規矩士先生、次にいらっしゃるのは規矩士先生と親しい方ですよ。お…

134.(余談)チケットの半券たち3 フルトヴェングラー、ベルリンフィル、グァルネリクァルテット、ローゼンタール、マーラーの交響曲第1番を聴いた、ピアノトリオ(クロイツァー、ヴォルフスタール、フォイアマン)、ジル=マルシェクス

1928年11月11日は昼間はフルトヴェングラー指揮ベルリンフィルのゲネプロを聴きに行き、夜は弦楽四重奏団を聴きに行ったようです。はしごをしました。 1928年11月11日(日)午前11時30分 フィルハーモニーホール フルトヴェングラー指揮ベルリンフィルハーモ…

135. 昭和4年1月27日1 アンリ・ジル=マルシェクスのこと

どれもこれも良いものばかりで何から話して良いか困ります。 日本でお馴染みのジル=マルシェクス氏をベヒシュタインザール(ここではあまり良い人はやられません)で聴きましたが、ベルリンではどうも他に沢山に良い人があるので、日本で感じた程ピンときま…

136. 昭和4年1月27日2 ベルリンの演奏会場について1「内地の演奏会場も立派ですよ」

ベルリンの演奏会場には内地のようにおちついたものは一つもないので、いつもそれだけが欠点だと思っています。場所はとても大きくて立派ですが、少しも落ち着きがありません。というのはステージの構造が違うからにもよりましょうが、あまりにごちゃごちゃ…

137.(余談) ベルリンの演奏会場について2 ベルリンジングアカデミーホール編 階段状のステージ

(この記事はピアニスト・ピアノ研究家の松原聡様にご教示いただきました。松原様ありがとうございました。) 規矩士がよく出かけるコンサートホールはどこだろう? 本人が書いたものによると、フィルハーモニーホール、ベルリンジングアカデミー、ベートー…

138.(余談)チケットの半券たち4 ジョゼフ・レヴィーン

1928年11月23日(金)午後8時開演 ベートーヴェンザール ジョゼフ・レヴィーン(1874ー 1944)(10月31日と同じ演奏者) ウクライナ出身。モスクワ音楽院卒業。同級生にスクリャービンとラフマニノフがいた。1898年に同じモスクワ音楽院出身のピアニスト、ロ…

139.(余談)チケットの半券たち5 ヒンデミットを聴きに行く!

1928年11月24日(土)午後8時開演 ジングアカデミーホール ミヒャエル・タウベ指揮室内楽オーケストラ ヴィオラ・ダ・モーレ:パウル・ヒンデミット(!!) (中の人ツッコミ) 何ですって!ヒンデミットですか?スゴイ! パウル・ヒンデミット(1895-1963)…