伯林新報

141. 昭和4年1月13日5 【伯林新報1-1】規矩士新聞を書いてみる。ベルリンのペット事情

規矩士は【伯林新報】なる新聞のような手紙を書くことにしたようです。これは書かれている文面から、いつも日本の新聞を送ってくれる黒澤家の人々に「ベルリンでの生活を新聞形式で書いたら面白いかもしれない」と考えたようです。 この後【伯林新報】と書い…

142.昭和4年1月13日6 【伯林新報1-2】『伯林の寒さは決して苦しいものではありません』『伯林の紳士は短く斬髪します』

『伯林の寒さは決して苦しいものではありません』 内地で想像する程に寒くないことです。 最も4月以来、慣らされていますから、そう感じるのですが、今、急に入伯(中の人注:ベルリンに来ること)されてはあるいはとても寒く感じられるかもしれません。「音…

143.昭和4年1月27日4【伯林新報2-1】『いくら寒くても室内にスチームさえ通えば決して寒くはありません』『電燈料の高いためにベルリン市民は非常に節約します』

【伯林新報2-1】 ベルリン到着の4月中の天気の日は7日間だけ。他の日は曇りか、雪降り、或いは一時晴れくらいのところでした。4月中(11日、23日、24日、25日、28日、29日、30日。以上晴天)寒さは未だ冬。外套を着て丁度良い程でした。この次には5月の天…

144.昭和4年1月27日5【伯林新報2-2】『タクシーは内地に比べて非常に安いことです』『パンはとても旨いのでいつも喜んでいます。バターも同様』

◎『タクシーは内地に比べて非常に安いことです』 いわゆる円タクなるものはとても安いことです。内地のものに比べても半額の感があります。こちらは油(中の人注:ガソリンのこと)が非常に安いので、そうだとの話でした。いくら安いとても我々にはやたらと…

145. 昭和4年1月27日6【伯林新報2-3】『いたずら小僧は日本人や中国人をからかいます』

◎『日本字で書かれてある商店を見るとなつかしくなります』 市内を歩いている時、どうかすると日本文字で「薬局」とか、あるいは「男女理髪所」とか「日本の御方様には特別に勉強いたします」とか等、いろいろの文句を見るたびに、何となくなつかしくなりま…

146. 昭和4年1月27日7【伯林新報2-4】犬の副産物の話。リンゴの話。

◎「話の種」 イ.ベルリンには犬が多いので、またそれにともなう副産物もなかなか大きいのです。 昼間はまだ良いとしても夜分等、少し暗いところではよくグシャリとやりますが、これにはいつもほとんど閉口しています。先日は危うくその副産物の上でダンスを…

147.昭和4年2月11日1 【伯林新報3-1】ベルリンは寒いです。

(規矩士の新聞【ベルリン新報】第3号です。) 五月中晴天の日(1,2,3,4,5,6,7,8,19,26,28,29,30,31)以上14日。 他は曇りがちで、時に雷鳴のこともありました。気候は割合に寒い方でした。今年はどうでしょうか。 〇今年の寒さは1917年以来とのことです。 …

148.昭和4年2月11日2 【伯林新報3-2】「郵便秤を買った」「商店では夏も冬も同じものを売っている」「近頃やっと太陽が出てくるようになりました」

〇郵便秤を求めました。 いつもこちらから配送いたしますものに目方の怪しいものがありますので、玩具のような秤を求めました。藤巻(ベルリンの友)のがいつも信用出来ませんので、あまり充分ではありませんが、小さい安いやつを机の上に備えて、いつも計れ…

149.昭和4年2月27日1 【伯林新報4-1】「寒い!」「下宿の暖房はスチーム暖房」「終日室を閉め切られるために、かなり丈夫の人でも顔色が悪くなります。」

伯林新報4(2月27日) 6月中晴天の日(1,2,4,6,9,19,20,21,23,25,28,29)以上12日 今年の寒さのレコード(中の人注:最低気温のこと)氷点下35度を頂点として暖かくなってきたようです。随分長い間とてもの寒さには閉口いたしました。今、一ヶ月続いたなら…

150.昭和4年2月27日2 【伯林新報4-2】「外国にいますと内地のことが時々大きくなって伝わります」「音楽会は相変わらずさかんです」

〇外国にいますと内地のことが時々大きくなって伝わります。 最近内閣総選挙の話がおこったり、最も不思議に思うのは御大典における二重大事件。突然のことでこれは内地の方からは耳にしませんが、外国にいる者が早くも知るようになりました。私もまさかと思…

151.昭和4年2月27日3【伯林新報4-3】「ハイカラなベルリンのご婦人」規矩士が見たベルリンの最新ファッション事情

〇ハイカラなベルリンのご婦人 どんなに寒い時でも絹の薄い靴下に美しい靴で平気で歩かれます。 それに近頃は頭髪を黒く染める人があるから驚きます。日本では赤くするのに、こちらでは黒くする等、両方がまるで反対に行くことです。西洋人はやはり赤い方が…

152.昭和4年2月27日4【伯林新報4-4】「下宿の日当たりが悪い」

〇ドイツ人でも不愉快な生活を嫌います。 我々日本人はこの大きな建物に住むことはあまり良い気持ちはしませんが、ドイツでさえ「嫌だ」と言っています。 夏のうちは未だ良いとして長い冬の間、全くなすする事なく室の中にくすぶるのはとてもたまらないと申…

200.昭和4年6月23日1 【伯林新報5-1】『日本婦人はマリアの典型』

伯林新報天候記事は都合にてこれから略します。しばらく多忙にて失礼しました。◎日本婦人はマリアの典型夫のため子どもなどのため、自分の身をささげる日本婦人こそ真のマリアの典型だと某プロフェッサーは申されました。 真の情愛は日本婦人でなければ見ら…

201.昭和4年6月23日2 【伯林新報5-2】『日本の活動写真がベルリンで見られる』『下宿のそばで二度の小火』

◎日本の活動写真 これは例のノーレンドルフプラッツの教会の隣の活動写真館に久しぶりかかりました。プログラムに御大典写真とありましたので、喜んで参りましたがそれは教会で中止されましたので、残念でした。いつも御大典のものをと思っても惜しいことに…

202.昭和4年6月23日3 【伯林新報5-3】『ベルリンの学生生徒の服装事情』

◎学生の服装は一定しません 大・中学(女学校)・小いずれの学校でも服装は一定しません。 大学等はまるでメチャメチャで一寸学校という感じがないでしょう。中学校も同様です。 小学校は色分けの美しい帽子をかぶっております。これは男女少しも変わりませ…

203.昭和4年6月23日4【伯林新報5-4】『靴が傷む』『ニワトリの声がしなくて淋しい』『ソーセージとチーズがいっぱいある』

△靴はとても傷みます。毎日履きづめのため、かなり傷みます。皮も内地と比べてあまりよくないようです。新調のは多分良いつもりですが、未だ1ヶ月ではわかりません。品物が悪くていいのには様子きました。洋服でも何でも悪いばかりで良くはありません。 △鶏…

225.昭和4年8月30日 【伯林新報6-1】 「水道は自由、電燈は不自由。」

1929年8月30日 伯林新報 今夏ベルリン最高気温は35度。この日が2日ほど続いただけで、他は毎日涼しい日が多く、避暑の必要がさらにありません。涼しい日でもベルリンの河童たちは夏のおしるしを作るためにさかんに「湖水浴」をやります。ブルブル震えながら…

226.昭和4年8月30日 【伯林新報6-2】 「小包発送の変更」「写真の練習を」「毎日旅客飛行機が飛びます。」

〇小包発送の変更 都合により小包は藤巻の手を経ず「東洋館主大津」に依頼しましたからご承知ください。藤巻とはこれからは(漢字が読み取れず)となります。宛名はすみ子様とします。来る9月のシーズンからこの者の手を経ることにします。なお念のため、着…

227.昭和4年8月30日 【伯林新報6-3】 「ベルリンの水回り事情」

〇住居の炊事場は完備されています。 大抵どこの住居も炊事場だけは感心します。ガスに電気を等分に使用しますが、狭い場所で自由に仕事が出来るようになっています。とても日本などの比較ではありません。何時でも希望のお湯、水、たくさんに出ますから、大…

228.昭和4年8月30日 【伯林新報6-4】「大抵のドイツ人は日本人の3倍の食事です」

〇大抵のドイツ人は日本人の3倍の食事です。 皆ではありませんが、大抵の者は日本人の3倍位の食事をとります。 レストランに来る者は端があるせいか割に小食に見えますが、自分の住居で食べる時はそれは素晴らしい分量です。とても手でさらなもの(?)をコ…

229.昭和4年8月30日 【伯林新報6-5】「レストランではなかなか水をくれません」(規矩士はトマトが好きらしいです)

〇レストランではなかなか水をくれません。 一番困らされるのは私どもです。ドイツ人はビールが水の代わりですから、なかなか水をくれません。ビールが飲めない者はこちらでも病人だそうです。 仕方がないので炭酸水をもらいますが。(中にはくれるところも…