昭和3年9月

61.昭和3年9月9日1「すみこ宛」1。ベルリン高等音楽院入学は事情によりやめました。

1928年9月9日 「すみ君へ」 大抵御通信は17日位、最も早い時は二週間のこともありました。 ベルリンには全く夏はありませんから、避暑は無用。来年は何とか旅行するつもりです。 そちらではこれに習って無理にどこか出る必要もありません。といっても止めは…

62.昭和3年9月9日2「すみこ宛」2。規矩士の兄、敬一の思い出1

②手のしびれも治りました。こちらは飛行機は盛んです。乗りやすいのですが、もしも乗って誰かに叱られるといけませんから、よしましょう。乗ってよければ乗りますが、落ちたらそれっきりですから、どっちにしたものでしょうか?あまり空ばかり見て歩くと変に…

63.昭和3年9月9日3「すみこ宛」3。すみこの先生「橘糸重先生」 東京音楽学校の同僚の先生がせっせと手紙を寄越すようです。

〇橘先生も次第に快方に向かわれて結構です。私は未だ先生からは一度も御便りをいただきません。これまで何回出したかわかりませんが、(不平にあらず)神戸、小倉、安藤、頼母木etc.各先生から盛んにいただくのですが、(橘)先生はきっとお忙しいのだろう…

64.昭和3年9月9日4「すみこ宛」4 襟巻感謝(届いているかはわからない)。クロイツァー先生に日本の絵を贈りたい。官費留学生としての心意気。

③編み物感謝します。これでこの冬は安心して超年が出来ましょう。きっと暖かで気持ちが良いと思います。それは女史の作ですから。なお一層に.....。(中の人ツッコミ:(*^-^*)と入れたいです) 今までの努力を本当に喜んでおります。休暇はこれで随分忙しか…

65.昭和3年9月9日5「すみこ宛」5 規矩士の兄、敬一の思い出2。ショパンの前奏曲作品28の7番の和音の話。

④お仰せにより、夜は少し注意いたしましょう。遅い時は2時頃までの時がありました。朝起きても頭がぼんやりとするので、今度は注意をします。 〇病気になると大変ですから。襟巻はいよいよ出来ましたか?早くつくのを楽しみに待っております。またきっと平和…

66. 昭和3年9月9日6「すみこ宛」6 子どもはカワイイ。怪しい女性がはびこる(>_<)。

(続き) 切手は子どもに分けてやっています。私の顔を見ると飛んでくる可愛いらしい小さな子どもがいます。こんな子ども君が一番なつかしくてうれしいです。子どもはどこでも無邪気で、可愛いらしいものですな。 怪しい女性はいたる所にはびこっています。…

67.昭和3年9月9日7 「ベルリン国立歌劇場でワーグナーのニュルンベルクのマイスタージンガーを観劇しました。素晴らしくて感動しています。」

㉕昨9日、シーズンの皮切りとして、ウンターデンリンデンオーパーに行きました。6時半から11時半まで5時間にわたる大物、さすがワーグナーの作だけに最後まで息を凝らして聴きました。題して「マイスタージンガー」これはレコードでもご存じでしょうが、こち…

68.昭和3年9月17日1 「ライオンの練り歯磨きが欲しいです。」

9月17日 ①「すみ君へ」 ファーストトイレットペーパー、只今到着。競争はすみ君の方が1日早く9月11日で、弟のは12日でした。やはり蒲田の方はベルリンに少し近いのでしょう。厚く御礼します。毎日油が出るので、おかげで助かります。今度はいよいよすみ子様…

70.昭和3年9月17日2 「クロイツァー教授の熱心なレッスンに感動しています。」

「それから今一つは、私の先生でもあり、あなたの先生でもあるクロイツァー先生に何かクリスマスに贈りものをしたいと思いますが、何が良いですか?これは宅の方と相談していずれなりともよろしくお願いします。 私の考えでは置物か花瓶の類はどうかと思いま…

71.昭和3年9月17日2 何かありましたか?

② 皆にすまぬようなことをして何と言ってよいか。これに対してお詫びする言葉も知りません。どうか私が帰る時は今までの人間ではありませんから、それだけも善くなったと思って私を見てください。今はもう夢中で勉強しています。あまり人が変わっていやにな…

72. 昭和3年9月17日3 規矩士の兄、敬一の思い出3。「襟巻まだ?」「クロイツァー先生のレコード」の話。

故敬一兄ソナタは私の帰り次第発表します。私の全生命を打ち込んでも立派に演奏したいと思っています。 かなり以前の作故、美しいとまでには行きませんが、これによって彼の精神を御汲みとり願いましょう。清らかな一生を終わった、しかもあまりに気の毒であ…

73.昭和3年9月17日4。「黒澤敬一御兄上様を知っている人に会いました」「クロイツァー先生にショパンのエチュードのレッスンを受けました」「東京音楽学校での大禮奉祝演奏会の練習が忙しいでしょう」「鎌倉に想いを寄せます」

〇聖句の絵葉書はもう他にはありませんので、またあったら何か送りましょう。ローマ書には私も感服します。聖句には一言一句皆、涙が出ます。 忍耐すればきっと良く.....。少し心配の事でもありますか。私にはその意味が少しどころではない大変に強く不安に…

74.昭和3年9月17日5。「私は本当に2年留学出来るのでしょうか?」「田中家への配慮感謝」

〇長坂氏のは「始めから1年半」これは秘密の話。私は誰にも言わなかったが、3年の人は留学生の中でわずか1,2名でしょう。 (こんなことは人には言わないこと。人に聞かれたら「3年が急に1年半になった」と言われたく。こちらの耳には「出発前から万事わかっ…

75.昭和3年9月24日1「すみ君へ。襟巻到着ありがとう嬉しい♡♡♡」

9月24日 ①すみ君へ 平和の使いがもたらす嬉しい贈り物は今朝無事到着しました。どこも傷んだところなく、それを開いた時の嬉しさ、どうかご推量下さい。 首にかけて半日はこの御返事に費やしました。どんなに苦心されたかあれを見ると本当によくわかります。…

76.昭和3年9月24日2 ドイツのピアノ事情。マイスタージンガーのチケット?クロイツァー教授のトリオのチケット

〇御通信は全部落手。こちらのも全部着く由。まず安心。無理をせぬよう注意しておりますから、ご安心を。事件は当分様子を見ます。 〇景色の良い所は一度でも見せたいと思います。本当の音楽もせめて出来るならばと希望する程です。日本ではとても悲しいかな…

77.昭和3年9月24日3 震災記念日と何か新しいピアノ?

〇記念すべき震災日をベルリンで迎え、昔の思い出を新にしました。何を考えても夢のよう。こうして今日になったのも皆、天恵です。全く感謝しております。蒲田で会ったのはまるで私も夢中でしたから、その時どうしたのか未だに覚えていません。君に何と言っ…