田中家家族
「下宿は都合により転居することにいたしました。これにはいろいろ理もありますが、つまらぬことをお耳に入れてご心配をおかけましてはと思い、お知らせ申しません。くだらぬことは未だ他にもたくさんありますから、その時に申し上げましょう。 ベルリンにも…
6月17日の手紙。この手紙は箇条書きになっています。 すみこ様 ◎第5信によりますと、ご不幸の御知らせがありましたが、さぞお力落ちしのることと御察しいたします。私も兄を失いましてから約1年位はいつも何をするのも勇気も出ず、ただそれのみ悲しみました…
8月12日 ①今度はと思った新下宿も、また不当な要求を言って来たので、原田氏及び藤巻とも相談の上、あるいはこの月限りで他に移ることになろうと思います。内容は実に乱暴な要求なので、 (これは私が言うにあらずで、原田氏及び藤巻、某もあまりのことにあ…
1928年9月9日 「すみ君へ」 大抵御通信は17日位、最も早い時は二週間のこともありました。 ベルリンには全く夏はありませんから、避暑は無用。来年は何とか旅行するつもりです。 そちらではこれに習って無理にどこか出る必要もありません。といっても止めは…
②手のしびれも治りました。こちらは飛行機は盛んです。乗りやすいのですが、もしも乗って誰かに叱られるといけませんから、よしましょう。乗ってよければ乗りますが、落ちたらそれっきりですから、どっちにしたものでしょうか?あまり空ばかり見て歩くと変に…
④お仰せにより、夜は少し注意いたしましょう。遅い時は2時頃までの時がありました。朝起きても頭がぼんやりとするので、今度は注意をします。 〇病気になると大変ですから。襟巻はいよいよ出来ましたか?早くつくのを楽しみに待っております。またきっと平和…
9月17日 ①「すみ君へ」 ファーストトイレットペーパー、只今到着。競争はすみ君の方が1日早く9月11日で、弟のは12日でした。やはり蒲田の方はベルリンに少し近いのでしょう。厚く御礼します。毎日油が出るので、おかげで助かります。今度はいよいよすみ子様…
故敬一兄ソナタは私の帰り次第発表します。私の全生命を打ち込んでも立派に演奏したいと思っています。 かなり以前の作故、美しいとまでには行きませんが、これによって彼の精神を御汲みとり願いましょう。清らかな一生を終わった、しかもあまりに気の毒であ…
〇聖句の絵葉書はもう他にはありませんので、またあったら何か送りましょう。ローマ書には私も感服します。聖句には一言一句皆、涙が出ます。 忍耐すればきっと良く.....。少し心配の事でもありますか。私にはその意味が少しどころではない大変に強く不安に…
〇長坂氏のは「始めから1年半」これは秘密の話。私は誰にも言わなかったが、3年の人は留学生の中でわずか1,2名でしょう。 (こんなことは人には言わないこと。人に聞かれたら「3年が急に1年半になった」と言われたく。こちらの耳には「出発前から万事わかっ…
〇記念すべき震災日をベルリンで迎え、昔の思い出を新にしました。何を考えても夢のよう。こうして今日になったのも皆、天恵です。全く感謝しております。蒲田で会ったのはまるで私も夢中でしたから、その時どうしたのか未だに覚えていません。君に何と言っ…
〇思い出の葉書を見る度に昔のことがはっきりと浮かんで一層忘れられなくなります。悲しみが新になるのは、何としても仕方がありません。忘れようと努力していますが、その度に自分というものがあまりに浅はかであったことがつくづくと見に染みて時に変な気…
投稿110,111のラフマニノフの演奏を聴いた感想の続きがこの手紙のようです。 「ショパンのファンタジーf-mollはこちらではいろいろの人が演奏します。クロイツァー先生も時々弾かれるので、深く印象しております。ラフマニノフ氏の演奏を聴いて、何程良いと…
30.どうか是非とも充分に勉強されて立派なる人になることを祈っています。先日こちらの大家から簡単なモーツァルトのソナタを聴きましたが、その時はどんなに感動したことでしょう。曲は何でもよろしいから要するに「心の演奏」をしてください。時には私は未…
「なんだか愉快になって知らずして足があちこちと進んでいきました。 店頭にはどこにも見事なクリスマスツリーが建てられ、リヒトは(中の人注:ドイツ語で灯りのことをLicht、リヒトと言うので、ライトアップかイルミネーションといった所のことを言ってい…
(この「すみ様」も編集をしてあります。) すみ子様(3月23日) 1.朝日新聞を嬉しく拝見しています。 2.「時の声」も拝読しました。アルコールの気持ちが私にはわかりませんので、何程そんなものかと有益に存じました。アルコールを使用せぬ者は一々珍…
7.御兄上様(中の人注:婚約者すみこの長兄、黒澤敬一氏のこと)のお船が一日遅れてご到着の由。皆々様のお喜びはさこぞとお察しいたします。御母上様のふらふらしそうは全くその通りです。御両親様のそのような御心持ちを決して忘れてはなりません。通り…