14.どなたかアンピコ(中の人注:なんのことかわからない)をお持ちとのこと、たくさんにお聴きください。私も帰ったならば聴かせていただきましょう。
(中の人ツッコミ)
アンピコって何?中の人はわからないです。しかし音楽雑誌「ショパン2024年6月号」に書いてありました!
ピアノの自動演奏装置のことだそうです。知らなかったです。
この雑誌の記事をざっとまとめました。
それによると、19世紀に機械技術の発展により自動演奏装置が進化し、精密な再現が可能となった自動演奏ピアノが誕生。1905年には紙ロール(ピアノロール)を使った自動演奏装置が誕生したそうです。
ピアノロールには、オルゴールのようなただ音の配列を記録したものと、高度な技術でピアニストの演奏を記録したものがあるそうです。このピアニストの演奏を記録したものを「アーティストロール」と呼ぶそうです。
ピアノロールが人気を博したころには既にSPレコードがあったとのことです。しかし当時の録音技術はまだ未熟でした。なので、ピアニストによってはこの「ピアノロール」での記録の方を好んだのだそうです。
その後の録音技術の向上があり、大がかりな再生装置を必要とするピアノロールは衰退してしまいました。
このピアノロールの3大メーカーは、ドイツのウェルテ・ミニョン社、米国エオリアン社のデュオ・アート、アメリカン・ピアノ・カンパニー社のアンピコ。
規矩士の手紙から、婚約者すみこの周りに、この「アンピコ」を持っている人がいて、何か書いたのかもしれません。「私も帰国したら聴かせて」と書いています。
この音楽雑誌「ショパン」には、このように書かれていました。
当時のピアニストはレコード録音とピアノロール録音という2つの選択肢があった。レコード録音は12インチ盤で収録時間片面4分半、しかもダイナミックレンジも狭かった。それに比べて長時間録音が出来て、ダイナミックレンジに気を遣う必要がなかったピアノロール録音を選ぶピアニストが多くいたとのことです。
しかし1925年ごろに録音技術の改良があって音質が向上。大規模な再生装置を必要としたピアノロール録音は衰退してしまいました。
現在、いろいろな所にこのピアノロール録音の記録媒体が残されているのだそうです。しかし経年劣化が激しい。
しかもピアノロール特有の問題もあるそうです。しかしそれを最近の新しい技術で克服し、再生する試みが多くあるのだそうです。
それらを克服することによって、新しい知見が得られているそうです。これらとレコード録音との補完関係によって、ピアノ演奏史の研究も未知への領域に進んでいくとのことです。楽しみですね。
この雑誌では、このアンピコ社のピアノロールは、東京都多摩市の「パルテノン多摩」にあると書いてあります。
実際に見ることができます。
【自動演奏楽器「クナーベ・アンピコ」実演】
このピアノロール録音と相性が良かったピアニスト、作曲家がいる一方、相性が悪いピアニスト、作曲家もいるとのことです。
相性が良いのがラフマニノフ、相性が悪いかもしれないと思われるのがドビュッシーとのことです。
ドビュッシーのピアノは
「タッチや音色など細かいニュアンスに魅力を持ったピアノ。」
この魅力がレコード録音では捉えられているが、ピアノロール録音では捉えられていないとのことです。
それに比べてラフマニノフは
「アンピコ社のロールで聴くとまるで生演奏を聴いているかのような錯覚を覚える」
とのことです。
中の人の感想ですが、ドビュッシーとラフマニノフの曲からしてもなんとなくわかるような気がします。
そしてこちらの動画は、おそらくいろいろな問題点を調整したものでしょうか。ラフマニノフとドビュッシーのピアノロール。
(これらの動画は中の人が自分で見つけてきた動画で、記事とは関係ありません。)
【Rachmaninoff - Chopin: Scherzo In B-Flat Minor, Op. 31】
(田中規矩士がベルリンで聴いたラフマニノフの感動がよみがえるようです。)
【 Debussy | La Cathédrale Engloutie Prélude 1-10】
ピアノロールに録音を残したピアニストや作曲家たち。
最古のものはライネッケ(1824-1910)。シューマンやメンデルスゾーン、ブラームスと親交があり、パリでショパンの演奏を聴いたことがあるとのこと。19 世紀の息吹を伝えてくれるのだそうです。
サン・サーンス、マーラー(え!スゴイ!)聴くと作曲者自身がどのように演奏したのか目に浮かぶようだそうです。
スクリャービン、フォーレ、ラヴェル、R・シュトラウスなど。
その他既に埋もれてしまった名ピアニストの演奏も、この技術によって蘇るかもしれません。それらのピアノロールの録音が令和の世に復活するのを楽しみにしたいと思います。
この投稿は株式会社ハンナ発行、ショパン 6 月号の「自動演奏ピアノ今昔」の夏目久生様の記事を参考にしました。
ご紹介した以外にもいろいろなことが書かれています。ご興味のお有りの方はぜひお手に取っていただければと思います。
記事を書かれた夏目久生様のCDレーベル。これからいろいろな音源を復刻なさるとのことです。楽しみです。