173.昭和4年3月23日2 すみ様2(雑談)「いろいろとお心遣いありがとうございます」

(この「すみ様」も編集をしてあります。)

すみ子様(3月23日)

1.朝日新聞を嬉しく拝見しています。

2.「時の声」も拝読しました。アルコールの気持ちが私にはわかりませんので、何程そんなものかと有益に存じました。アルコールを使用せぬ者は一々珍しく感じます。

3.御送付の者のうちで歯ブラシ2本は惜しくもおれましたから、1本を大切に使っています。いつもながら厚く御礼を申し上げます。他の品物は異常はありませんでした。

5.朝日グラフも時折出しては楽しみに眺めます。内地では普通のことでもこちらにはどんなに懐かしいか知れません。

7.ポスターもまた折を見て後の分を送りますから、御保存下さい。

13.音楽の記事はだんだんと書いていきます。

14.書きっぱなし故、統一も何もありませんから、さだめしつまらぬでしょう。文章は注意して面白くしたいのですが、それでは時間がかかりますから、いつも仕方なくめちゃめちゃに書きます。これまでも文章や字には少しも注意せずにきました。論文とは違いますから、充分に読まれる方で判じてください。書く方はすこしも注意しないので、お気の毒様に存じています。

15.伯林新報は折を見て(漢字が読み取れない。書くと言いたいのか?)しますから、お待ちの程を。

16.聖句の絵葉書はまた送りましょう。一度にいろいろの御注文ではどれを先にしたものやら迷いますので。

26.こちらからの聖句ハガキ、芸術ハガキなどはあれでもベルリン市中を一生懸命で探したものですから、一寸お知らせします。特別な絵葉書は大抵の店では売っていません。

17.寒い時にセーターはどんなにか嬉しかったでしょう。おかげ様で寒さで風邪もひかず助かりました。御母上様によろしくお伝えください。毎日使用しています。また、内地で入用のものがありましたらが、申し上げましょう。

 

(中の人ツッコミ)

規矩士の黒澤家への御礼です。

何故かベルリンには朝日新聞がないようです。それでまずは朝日新聞の御礼から。

「伯林新報」や音楽の記事もおいおい書いていくので、少々お待ちをとも。それらの手紙は「論文」ではなく、フリーライティングなのでお許しをとも。

そしてこの手紙からも規矩士が「お酒を嗜む」ということをしないということがわかりますね。

 

「6.御姉上様がいなくなられてはさぞ御淋しきことでしょう。静かだとて無理の勉強をせぬように願います。

19.御姉上様のことについては立腹どころかとても喜んでいます。地味云々が私にはとても気に入りました。派手にすることは無意味で何の為かわかりません。将来もすべて地味に限ります。御兄上様にはちょうど試験中に御帰国なされるとのこと、忙しくても出来る限り御もてなしください。帰国第一の印象ほど忘れがたいものはないそうですから。

24.御妹様も今年は卒業とは早いものです。御兄様も来年は御卒業、これまたもってすばらしく早いように思われます。学校につれていったのはこの間と思っていたら、もうそうなるとは驚きます。御姉上様もめでたくご家庭に御入学、さだめし実社会をどのように御研究遊ばされおりますや。御満足の御事と深く深く推察いたします。

8.家の件については宅からも通知があったので、困ったものと思いました。あるいは両親から話があるかもしれませんが、どうか何分よろしく願います。私の留守中とて良いところがあったら、何日でも移ることを希望します。老人の健康に良い、そして割合に便利のところにしてください。我々共の如き貧しきものにはやはりあばら家が適当ですから。それも申し上げておきます。両親の意思にまかせてありますから、その辺りはいろいろご相談願いましょう。産婆とは驚きましたが、これなどは差支えないとして、ただ、火の元だけが本当に困ります。練炭はいつでも良いからやられたく遠慮はいりません。ベヒシュタインも喜ぶでしょう。」

(中の人ツッコミ)

婚約者すみこの家族に対する配慮。

そして田中家の話も書かれています。