13.今日はベルリンに来てはじめて最低温度で10分くらいの外出でもとてもやりきれないので、急いで下宿に帰るような具合です。
日中午後3時頃でも0度以下、18度から20度までありますから、早朝だったらばとても低いだろうと思います。日中でこんな寒いことは今までにはありませんでした。日中と早朝とでは10度からも違いますから、おそらく今日が最も寒い日ではないでしょうか。
急いで歩いてさえたまらないのですから、立ち止まったならば凍傷でも起こしましょう。あるいはこれからももっと寒くなるかも知れませんが、その形容はとても筆では表せません。「目の玉が凍るのではないか」等と言う人もありました。
御送付の襟巻はまるで氷のようになってしまうので、怖ろしくなります。
今日はあまり冷たいので、スケートも誰もやりませんでした。これではスケートどころではないでしょう。室の中で小さくなる他はありません。
今日は珍しく快晴だからにもよるのでしょうが、ベルリンの人にも驚いていました。
それでも決して襟巻、マスク等をしないのには感心します。
いつもと違って人通りも少なく、街は極めて静かでした。
室にいても相当に寒いので、長いことじっとしてはいられませんから、手紙を書きながらも室内をウロウロします。
こうなると内地の皆様が本当に懐かしくなります。早く暖かい日が近づいて野山に散歩が出来るようにと願うばかりです。まるで家の中に閉じ込められたようなものですから。内地の皆様ばかりでなく、気候にまでとても言うに言われぬ恋しさを感じられます。将来も未だにいろいろのことがあるでしょうから、いずれ申し上げることにして、今日は寒さのお話はこれで打ち切りましょう。」
(中の人ツッコミ)
規矩士の新聞【伯林新報】にも「寒い!」「寒い!」と多く書かれていました。おそらく寒波がやってきているのでしょう。スチーム暖房の部屋の中でも相当に寒そうです。「気象庁過去データ」のドイツ版があるとひょっとしてこの年のベルリンの気温がわかるのかもしれません。中の人はドイツ語は苦手なので、見つけられません。(すみません)
規矩士は「氷点下18度から20度」と書いています。本当にそこまで冷えたのでしょうか?
ベルリンでは2024年1月27日、最低気温2度、最高気温6度。2月17日は最低気温6度、最高気温12度と書いてありました。(気象協会のウェブサイトによる)
現代の東京とベルリンはそんなに差がある訳ではないようです。
ただ、この1929年は東京でもかなり寒かったようで、いつもの気象庁過去データでは1929年(昭和4年)1月の東京の最低気温は軒並み氷点下です。1月3日は氷点下6.5度とのこと。現代の東京はそこまで気温は下がりません。
やはり地球温暖化で東京もベルリンも暖かくなっているのかもしれません。
とにかく
「ベルリンの冬は想像を絶する寒さだ」と規矩士は心の底から思っていることは間違いないようです。