154.(余談)1926年の東京。1927年のベルリン。

以前【ベルリンリンク集】でご紹介をした【Aiカラー化 大正時代の東京の映像に色をつけてみた】という動画の全編がYouTubeにアップされました。(2024年3月8日公開)

【『公衆作法 東京見物』1926年|「フィルムは記録する」より ‘Films is a Document: NFAJ Historic Film Portal’】

文部省(当時)制作 56分,白黒,サイレント

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1926年は大正15年そして昭和元年です。この年は婚約者すみこが東京音楽学校に入学をした年です。規矩士の弟、三郎さんが日記を書いた1923年(大正12年)~1924年大正13年)から2年後。そしてこの動画の2年後の1928年(昭和3年)に規矩士はドイツ、ベルリンに留学しました。

この動画の概要によると

「海外に渡航する息子の見送りに故郷から出てきた父娘が東京見物をするという設定を通して、公共マナーへの理解を促すことを目的に製作された作品。震災から復興した東京の各所がスケッチされ、上野・帝国図書館のくだりでは、公衆作法講演会に参加するという作品の舞台裏まで登場する。」

という啓蒙映画のようです。

この動画のYouTubeチャンネルは、日本で唯一の国立映画専門機関「国立映画アーカイブ」のチャンネルとのこと。このチャンネルでは「国立映画アーカイブ」に所蔵する劇映画ではない実写作品である文化・記録映画やニュース映画を順次公開するそうです。楽しみですね。

filmisadocument.jp

こういうものが自宅パソコンからいつでも見ることが出来る。ありがたいことです。

余談ですが中の人の父がこのライブラリーが好きで、よく通っていました。(中の人の父は映像制作者でした。)

話を戻します。

この『公衆作法 東京見物』は啓蒙映画として、ある程度の作り込みはしてあると思いますが、田中規矩士、田中三郎、たなかすみこ(旧姓黒澤)など、この時代を生きた方々のリアルが見えます。

「この当時の汽車ってこんな感じだったんだ」(タバコを吸う人が多い。汽車の床がゴミで汚い)

「お降りの方が済んでからお乗りください」(100年前から何も変わらないんですね苦笑)5分47秒あたり。

「交通の妨げになる歩き方」(ハイ!100年後もあるあるですよ笑)24分35秒あたり。

「咳、くしゃみをする時は布きれ又は紙などで鼻口を覆うこと」(100年後はマスクをしましょうですね。コロナ禍で注意をする人が増えました。)29分43秒あたり。

公衆作法の講演会を聞いていますが、席が男女別となっています。時代です。

そして西洋料理のマナーの部分では、私はご婦人の帽子より、フォークやナイフで人を指す方が気になります。フォークやナイフを振り回してはダメですよ。(苦笑)

サイレント映画なので、きっと弁士が面白おかしく語り、わかる人は爆笑していたでしょう。

で、最後はどこかの港からの海外への出航です。東京見物の後なので、横浜港ではないかと思います。海外航路は横浜発です。東京港の開港は1941年(昭和16年)なので、この当時はまだないです。

ということは、規矩士が出発する時、婚約者すみこが見送りに行ったのはここかもしれない。そして原田教授のお出迎えにすみこと三郎氏が行ったのもここだと思います。もちろん規矩士が帰国した時もここでしょう。こんな感じだったのですね。

 

何回も出している動画、ヴァルター・ルットマン(Walter Ruttmann)というドイツの映画監督が制作した「ベルリン・大都市交響楽」というドキュメンタリー映画を貼ります。1927年制作。

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『公衆作法 東京見物』と1年しか違わないので、ほぼ同年代と考えられます。

 

見比べてみるとあまりの違いに驚きます。ベルリンに比べて東京の建物が低い。

やはり女性の服装がかなり違います。規矩士がビックリするのもむべなるかなと感じます。この時代は日本ではまだ和装が多かった。ベルリンの女性は短いスカートです。

規矩士はきっと「女性の足が出ている.....。」と絶句したのでは?

他にも違いがとても多く、明らかにカルチャーギャップ凄すぎです。

規矩士の驚きと戸惑いを感じることが出来ました。

こういう動画を比較すると同じ時代でも東京とベルリンは全く異世界ということがわかりました。この時代は地域差が大きかったということですね。

 

(独り言1:今は世界中の人がファストファッションだから、服装の違いはないし、建物も同じようなものが多いしで、規矩士ほどカルチャーギャップは感じないかも。しかし細かい違いはありますよね。食べ物とか。)

(独り言2:100年前の人々と身振りや仕草があまり変わらないのが面白いです。100年後の日本人もペコペコお辞儀ってうっかりしてしまいますよね。こういうものは変わらない)