132. 昭和4年1月13日3「すみ君へ」3 東京音楽学校や音楽界の雑談。「大禮奉祝演奏会(ミサ・ソレムニス)」モイセイヴィチ、シロタ

4.今年度の新しい留学生の御方が来られたならば、大いにお世話をしてあげましょう。音楽学校では誰でしょうか?早く決まればその御方に御便利をお計りしたいのですが。

(中の人ツッコミ)

規矩士先生、次にいらっしゃるのは規矩士先生と親しい方ですよ。お楽しみに。

 

12.弟からミサの切符の御礼がありました。私からもまた改めて御礼を言います。ミサは大成功の由。とても喜んでおります。猛練習をしたその結果でしょう。

(中の人ツッコミ)

このミサとは。

1928年(昭和3年)12月12日、東京音楽学校では昭和時代の皇后陛下香淳皇后をお迎えして、「昭和天皇の即位の祝賀演奏会」を挙行。

「大禮奉祝演奏会」

曲目は《大禮奉祝合唱曲》とベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》

指揮は当時の音楽学校の外国人教師のチャーレス・ラウトロプ

この合唱に婚約者すみこが参加したようである。

規矩士の手紙からこの演奏会のチケットを規矩士の弟三郎のために手配をしたのか?プレゼントしたかしたようです。となると三郎も聴きに行ったかと思います。

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13.校舎がきれいになったので、どんなかと考えております。千里眼ならばあるいはわかりましょうが、全くどんなのか検討がつきません。

(中の人ツッコミ)

中の人が読んだいくつかの資料(すみません、具体的な書名は忘れました。たしか東京芸術大学百年史か畑中良輔氏の著作だったと思う)に「皇族が学校に来るにあたってやはり学校を整備する必要があり、当時の校長乗杉氏がどこからか予算をつけてきて整備した。つまり皇族が来るたびに学校が綺麗になっていった」とあります。これがやはり文部官僚だった乗杉校長の敏腕だった所なのでしょう。

20.学校もいろいろのことで授業時間が少なかった由、これも仕方がありません。ベルリンの先生は無休。クロイツァー先生は今のところわかりません。

5.音楽会には出来るだけたくさんに参ります予定。モイセイヴィチ演奏会では昔の思い出が深くて。何程私も一度聴きたいと思います。シロタ氏はクロイツァー先生も知っています。だんだん多くの人が内地に出かけましょう。

(中の人ツッコミ)

ベンノ・モイセイヴィチ(1890-1963)

ウクライナオデッサ出身。1905年にイギリスに移住。1908年デビュー。1919年ニューヨークデビュー。ラフマニノフと親交を結ぶ。

ラフマニノフが「自分の作品の正統な解釈者」として認めました。

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日本に初来日するのがどうやら1958年(昭和33年)のようなので、すみこはおそらくレコードか何かの感想か思うところを規矩士に手紙にしたようです。この文言はすみこの手紙の返信と思われます。規矩士がベルリンでモイセイヴィチのコンサートに出かけたかどうかは現時点ではわかりませんが、文面から行ったのでは?と思います。

19.シロタ氏についていろいろの感想、面白く拝見しました。

何程その通り、私が申し上げた同様無理のない演奏(自然の意味も中に含まれています。)が最高のものでしょう。けれども今、大家の言、そのままを適用できるかどうかは悲しいかな、外国と日本とはレベルがとても違いますから、よほど注意を要します。新譜をスラスラと、あるいは機械のように動く(?漢字が読み取れない)を所有する外国人と今、同様にすることは(将来はそうなりましょうが)とても不可能ですから当分は日本という立場を考えて判断することを希望します。そうでないとただ頭だけが先に行きますから。これは勉強者にとって一番危険なことです。やはり階段は下から一歩一歩順を追って登らなければいつか落ちてしまうことはわかるはずです。大家のえらい所は、皆ぶれない所です。この短い文章でつきています。

(中の人ツッコミ)

レオ・シロタ(1885-1965)

ウクライナ出身のピアニスト。キエフ音楽院、サンクトペテルブルク音楽院、ウィーン音楽院で学ぶ。ウィーンでデビュー。ヨーロッパ各地で大きな成功を収める。1929年(昭和4年)日本定住。1931年から1944年まで東京音楽学校ピアノ科教授。レオニード・クロイツァーとともに「シロ・クロ時代」として日本の音楽界に多大な貢献をした。日本人の弟子多数。

娘のベアテは戦後の日本国憲法の人権条項作成にたずさわり、女性の権利を明記するすることに尽力をした。

東京音楽学校の同僚としてシロタ氏のことは規矩士もよく知ると思います。

【レオ・シロタ リスト:ドン・ジョヴァンニの回想】

サムネですが、右から山田耕筰ベアテ・シロタ=ゴードン、レオ・シロタ、シロタ夫人ではないかと思います。

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