2.私のすることもすべて夢の国、あるいは詩の国であると思います。御先輩から見たならば全くその通りです。決してえらい事は言えません。どうか私より以上の御両親様のご注意を沢山に受け入れられることを希望します。それが私のお願いです。
3.世の中は自分の思う通りになると思うと大変間違いです。数学的に１に２を加えて３になることはありません。いくら美しく見てもそれが美しくならぬことです。といって皆そうではないかというと、美しい事もありますが、要するに美しい方は少ないでしょう。美しく見る人が多くなればそれは理想的ですが、なかなかそうは行きません。人のことは別として自分自身は善意に解するように努めたいものです。
国家においてもそうでしょう。世界各国のお互いの付き合いはどうですか。表面は平和を希望して裏面は軍備の充実を図っています。まるで平和だか戦争だかわかりませんよ。アメリカの如き裏面は何でしょう。
三保の松原で天人を見るようです。馬鹿に詩的な、さながら羽衣という場面ですね。こちらの頭がぼっとします。なんだか夢の国にでもいるようです。オラトリオでしょう。
7.御姉上様にはご静養として鎌倉にお出でとのこと。留守中はお淋しいことと存じますが、なにとぞ御大事になさいますようにお願いします。
8.御通信はすべてどなたが御覧になってもよろしいのですから、御姉上様がお留守の時は御母上様でもどうぞご遠慮なく御開封ください。どなた様が御覧くださっても結構ですから、どうかそのおつもりに願います。御姉上様とご一緒に御覧くださるようにとの私の考えからいつもそういたしております。ご一緒に御覧下さればそれでよろしいのです。次はどうか何かへ御しまいを願いたく存じます。決してこちらのご心配はいりませんからその旨お伝え下さい。
22.各地の絵葉書や新聞などいつも到着を楽しみに見ております。ハガキは毎月愉快に使用しておりますから、御通信します。内地に帰ったようで、少しも淋しいことはありません。内地品は何か一つ毎日使用することが本当に良いことを知りました。それは例の温かいものは少しもなす事はありませんから、どうぞそのおつもりで。
6.金亀殿にもよろしく。
（中の人ツッコミ）
規矩士が珍しく国際情勢に関して何か言っています。時期的に1921年から1922年のワシントン軍縮会議からの一連の国際情勢のことかもしれません。台頭して巨大化するアメリカに対する複雑な思いが、世界中にあったようです。日本の新聞もドイツの新聞もこの話題は多かったと思います。
金亀殿はわかりません。規矩士とすみこだけが知る何かの内輪の人のことかもしれません。
