113.昭和3年11月21日 すみ君へ1 郵便料金、「2年はすぐ経ちます。こちらにいてもあまり早いのでがっかりします。少しも長くいたいものです。」

「すみ君へ」

(すみ君への手紙は思いつくままに書いているので話題がまとまっていません。なので中の人が編集をしました。番号は元の文章の順番を示しています。つまり番号をたどれば元の文章になるという仕掛けです。)

1.いつも原田様からいろいろとお世話になります。来年4月ごろにご帰国の由、また一人になって淋しくなります。今度は自分から皆様に親切にします。原田様と同じように。

(中の人ツッコミ)

原田教授との交流が書かれています。本当に規矩士と原田教授は親しくしたのだとうことが、この文章からも読み取れました。

11.手紙では宅からの通知で一寸驚きました。何でも2,3度不足のものがあった由。それに中身を調べたものがあるとの事。事の意外にびっくりしました。手紙は20グラムまでなら良いとこの事で、いつも藤巻に言って20グラムキチキチに計って出しますが、最近藤巻の機械に故障のあることがわかり、「或いは、もしや」と思っていた所、案の定その通信でしたので、多分蒲田の方にも不足税のものが行きはしなかったかと心配しているところですが、万一ありましたならば、ご遠慮なくお知らせ下さい。ドイツはなかなか厳重ですから、どうして不足税のものが行ったかと、不審を抱いています。

今度は充分に注意をしますから多分良いとは思いますが、今まで大変に失礼しました。新聞等が非常に厳重ですから、手紙も良いと思っていましたが、最近2,3度郵便局から返されたので、急に気が付いたのです。計量器械に故障があったのでは何もなりませんから。すべてこちらに来る新聞、郵便物はすこしも開封しないだけが幸いです。ただ、品物だけは税関で必ず目を通しますから、時にはめちゃめちゃになってほどけて着く場合があります。

(中の人ツッコミ)

郵便料金のことで揉め事があったようです。藤巻というのは以前の手紙にあった同級生のことかもしれません。お友達の所に秤があるようで、きちんと20㎏に計って出していたのに、秤が壊れてしまったようで、不足分を取られたようです。

手紙の開封はほぼないようですが、品物は税関で開封されてしまうようですね。

 

12.手紙のことで思いつきましたから申し上げます。ドイツの名文はおわかりになりましょう、よく読むと意味のわからないところ、可笑しい場所がありますからご注意下さい。そこに「名文の名文たる謂れがある」のですから。ドイツの人がこの間大笑いしました。

13.寝具には本当に閉口します。まるでカチカチで身体が痛くなります。毛布で少し助かりました。やっぱり内地の布団が懐かしいです。

14.ハサミの意味にはもちろんそのこともありますが、猶それら上に何か思いがけない秘密のような謎のようなことが含まれています。これもあれも皆、ベルリンの貴い思い出になりましょう。それを語ってくれるものは、ただそのハサミあるのみです。この解釈はおそらくおわかりにならぬでしょう。私が帰りましてからゆっくり申し上げます。これは外国に来たものでなくてはわからないことですから、ただ、ご想像に任せましょう。

15.2年はすぐ経ちます。こちらにいてもあまり早いのでがっかりします。少しも長くいたいものです。

 

(中の人ツッコミ)

たまにホームシックになってしまって「内地、日本が恋しい」となりますが、やはり本場ベルリンでの音楽修行、「もっともっと学びたい」という気持ちが強い。それには2年では足りない。やはり本音は5年はいたいと言う所でしょうか?