「オーケストラの感じ、音の具合等、筆ではちょっと言えませんから、いずれ帰国次第に詳しく申し上げることにして、ここでは目に見えたことをお話しすることにします。
総練習の時はオーケストラの部員の服装は通常服で、これは上野と変わりません。先日の合唱の時のはコーラス部員だけ正装をしていました。本式の時は皆、燕尾服です。私がかつてトリオの時に着ましたがあんなやつを大勢が揃って着るのですから、我々田舎者はそれを見ただけでも驚かされます。
オーケストラ部員は中にはすてきに若いのもおりますが、大抵は相当の年配でなかなか立派なスタイルの人もいます。前に上野におられたクローン先生のような人がたくさんいるので、オーケストラそれ自身が何となく重みがあり、それに男女共(漢字が読み取れない)合同の上野の箱根細工式オーケストラではありません故、見た感じも気持ち良く演奏されないうちから「なーるほど」ともう感心してしまいます。
(中の人ツッコミ)
私が知っている限り、コンサートの練習、ゲネプロ(総練習)は基本は普段の恰好での演奏です。しかしオペラやバレエといったもの、合唱のシアターピースなど衣装付きの曲はゲネプロは本番の衣装を着ます。(指示が出ます)
あとは本人の都合で(新しいドレスを着用とか、新しい燕尾服を着用とか)練習、ゲネプロの時に本番用の恰好をすることがあります。新しいドレスやブラウスなどの時は一度本番の衣装を着てみて演奏してみるというのも、その時に不具合を見つけられるので、アリです。ゲネプロの時に合唱団員が本番用の靴を履いてやるのはよく見かけます。合唱曲によっては長時間立つので、そちらの具合も見ておいて、心おきなく「本番」を迎えたいですから。
ペダルのあるピアノ、パイプオルガン奏者も本番用の靴を履いての練習、ゲネプロをします。よく見かけます。
「それに男女共(漢字が読み取れない)合同の上野の箱根細工式オーケストラではありません故、見た感じも気持ち良く演奏されないうちから「なーるほど」ともう感心してしまいます。」
時代を感じます。
規矩士が「なーるほど」と思ったベルリンフィルでも女性団員が増えました。
1982年、当時の常任指揮者であり、「帝王」と言われたあのカラヤンが女性のクラリネット奏者を入団させようとして一悶着ありました。結局彼女は入団出来ませんでした。しかしその翌年、ベルリンフィル初の女性団員が誕生するのでした。ベルリンフィル創立から101年後のことでした。
現在では20人ほどの女性団員がいるそうです。現代は「男女平等」のご時世。最も保守的と言われた「ウィーンフィル」にも女性団員がいます。
規矩士が「うーん」と思った男女合同の「東京音楽学校管弦楽部」は時代を飛び越えた最先端ということだったのですね。(ちょっと皮肉です)
この意見は規矩士がおかしい訳ではなく、「そういう時代だった」ということです。1920年代にはまだ男女平等という意識はありません。規矩士としては
「東京音楽学校は仕方がない。しかし世界最高峰のベルリンフィルは団員は全員男性。なので、日本もそうならないといけないのかな?」
こう思うのは当然でしょう。
(書いている人は、中の人の同窓生だったりする(*^-^*))
クローン先生とは、1913年(大正2年)から1925年(大正14年)に東京音楽学校外国人教師だったグスタフ・クローン氏のことです。クローン先生はあの1924年(大正13年)の東京音楽学校でのベートーヴェンの交響曲第九番の演奏会の指揮をした先生ですね。
規矩士もすみこも良く知る先生です。
こちらのサイトの中にクローン先生の写真があります。(20.グスタフ・クローンを探してクリックすると見られます)