ティンパニ(普通鉄太鼓などと称しています)も2組あって(つまり4個並べられます)それが同時に叩かれますから全く気持ちが良く、時にはティンパニだけのソロがあったりして実に愉快です。内地ではよく高折氏(中の人注:高折宮次氏のこと。東京音楽学校ピアノ科教授でティンパニ奏者ではないですが、人材不足ということもあってオーケストラではティンパニを叩きました)が叩かれましたが、こちらの本場のものを見るとそんなものでも(と言ってはあまり失礼かも知れませんが)何程と感心させられます。
すべて太鼓をたたくということが、とても気持ち良くかつ、面白く聞くことが出来るのはこちらの本場のものだけでしょう。内地ではむしろうるさい感がありますが、あの「うるさい」のがこちらに来るととても良くなるのですから、不思議。また不思議なくらいに上手なのです。太鼓だけのソロでも充分に聴く価値があります。テクニックが素晴らしいのですから。
コントラバスが8つ位並ぶとかなり低音がうなりますから、胸がすっとします。
丁度パイプオルガンを弾いているようです。」
(中の人ツッコミ)
「やっぱり本職のティンパニ奏者は不思議なくらい上手。うるさくない。」規矩士が興奮して手紙を書き送っています。
規矩士はティンパニが4個並んでしかも目立って、コントラバスも多く使われる演奏会に行ったようです。
こんな感じでしょうか?初っ端から4個どころか2組8個のティンパニが並びます。コントラバスも8本以上並びます。昭和3年に日本でマーラーのような大規模オーケストラ作品が演奏されたことはあったのでしょうか?どちらにしてもあまりなかったかと思います。うろ覚えなのですが、1931年(昭和6年)マーラーの弟子でもあったクラウス・プリングスハイムが来日して東京音楽学校教授になるまで、このような大規模オーケストラ作品の上演はあまりなかったと思います。←情報求めます。
現代のベルリンフィルのティンパニ奏者たち。カッコイイですね。
ティンパニとドラムセットの曲。ティンパニでこんなことも出来るのですね。
「パイプオルガンといえば、以前にはオペラについて話ましたが、こちらには相当の活動に(中の人注:活動写真。映画館のこと)皆あります。上野では今度出来たので、大騒ぎをしていますが、今頃そんなことで大騒ぎをするとこちらの人に大笑いされます。活動写真でパイプオルガンのソロが聴ける等はさすがドイツでしょう。
ですからちっとも珍しくはありません。むしろ音楽学校にそれがないのが恥ずかしい位です。こちらの音楽学校には素晴らしいのがありますから。外国には一流のところになるとどこでもあるらしいです。」
(中の人ツッコミ)
映画館でのパイプオルガンというのがドイツの映画館にあったんだろうか?と思って調べたら1920年から1930年代にかけて「シアターオルガン」として映画館にあったようです。動画はイギリスのものですが、ドイツも同じでしょう
シアターオルガンは日本にも良いものがあります。日本橋三越のオルガン。先ごろ修復工事が済み、また楽しい音色を響かせているようです。1930年製とのこと。
そしてヨーロッパはパイプオルガンの本場。まず規矩士がいたベルリン大聖堂の動画。
ここのパイプオルガンは1905年制作のもの。19世紀以降のオルガン作品が似合うと思います。天井が高くて残響がすごいので、大音響が天から降って来る体験ができます。これを聴いた規矩士はおそらく本当に驚いたと思います。この音響は昭和3年の日本では聴くことは出来ません。
ここのパイプオルガンは南ドイツなので、規矩士が聴くことは出来なかったけど、こんな感じのオルガンが至る所にあるのがヨーロッパ。
パッサウの聖シュテファン大聖堂のオルガン。世界最大のものだそうです。
同じ曲をパリのサン・シュルピース教会のオルガンにて。ここのパイプオルガンは19世紀の名器として有名です。(カヴァイエ=コル)中の人はこのオルガン聴きました。耳というより皮膚で聴く感覚です。
ハンブルクの聖ヤコビ教会のオルガン。このオルガンはバッハ時代のバロック様式の名器として有名です。(シュニットガー)。わりと鋭い音が特徴。中の人はここのオルガンも聴きました。
こちらもバッハ所縁のオルガン。チューリンゲン州のアルテンブルグ城のトローストオルガン。このオルガンはバッハも演奏したことがあるそうです。
鍵盤が重いんだそうです。
中の人もこのオルガンも聴きました。雰囲気が良いです。
スイス、バーゼル近郊にあるパイプオルガン。このオルガンの製作者、ジルバーマンとバッハは関係があります。こちらは柔らかい音。(ここは知らない)
まだまだあります。規矩士曰く「パイプオルガンは至る所にあるからちっとも珍しくありません」です。
規矩士がどれだけのパイプオルガンを聴くことが出来たかはわかりませんが、日本では聴くことの出来ない響きに酔いしれたと想像しています。