26.いよいよシーズンで、ますます賑やかです。外は寒いので震えますが、この辺りは一寸内地と違います。内地ならば気候の良い頃かそうですが、こちらは寒くなればなるほど良くなるのですから、だいぶ変わっています。
先日は第二回としてヴェルディのDie Macht des schicksals(中の人注:運命の力。原題La Forza del Destino。ヴェルディなのでイタリア語です)を見ました。
ワーグナー程には良くはありませんでしたが、それでも面白く見物しました。
ウンターデンリンデンのオペラはパイプオルガンもあります。先日の時はハープが2つもあり、それにパイプオルガンに多数のオーケストラでしたので、それはそれは気持ちが良うございました。
あらすじはよくわかりませんが、始めは教会の讃美歌から始まります。遠くからコーラスが聞こえてきますが、この時はパイプオルガンでやりますので、とても素敵でした。途中でも寺院の所ではパイプオルガンが使用されていたので、まるでチャーチ(中の人注:教会のことだと思います)に自分が浸るようでした。オペラだかチャーチだか全く区別がつかなくなります。ろうそくの燈りの下で、僧侶のコーラス、いやどうもしんみりして全体がひっそりせんとしてしまいました。あれで御説教があればもうキルヒェ(中の人注:ドイツ語で教会)でしょう。私は時にこう(?漢字が読み取れない)風な場面を見る場合があります。
相変わらずオーケストラはすてきなもの。ハープでも実に上手ですから、ハープだけ聴いても充分の価値がありましょう。最後まで肩がこらずに見物することが出来ました。
やはりワーグナー物はドイツだけにどこのものより一番うまいようでした。またそのうち何かありますから、時間がつく限り参りたいと思っております。
オペラの指揮者の権威はすばらしいものです。そうでしょう。プロフェッサーの称号のある人がありますから。上野のオーケストラをそのまま帝劇に持って行ってオペラをやると思えば早わかりです。
島崎教授がタクトを取るようなものですから。(中の人注:島崎赤太郎東京音楽学校教授のこと)
私が感じたことは、(?漢字が読み取れない。)気分に少しもならぬことで、どこまでも或る芸術として聞かれることで、また見物する人も皆、真面目ですから、この点はいつも嬉しく感じております。
開演中は音楽会と同様中への出入りを禁じてあります。日本のように開演中にガタピシするのとはまるで違います。外から鍵をかけてしまいますから、入りたくてもその時間が経つまで外に待たねばなりません。また、遅れて来る人もありませんから、(稀にはありますが、その人はおとなしく外で待っております)その必要はありませんが、それにしてもそういう道徳は完全に習慣つけられてあります。
大抵筋書(音楽譜つきの詳しいもの)を持っておる人が十中のうち八人はありましょう。私のようなものはわからないので、普通のもの(それでもわかりません)で偉そうに用を足していますが、あまりきまりが良くはありません。そんな人に見られると、あるいはさかさまに見るかも知れませんから、なるべくわからないようにこっそり見ます。余程とみてもわかりませんから、結局閉じることになりましょう。
日本の通人が歌舞伎を見るのと少しも違いません。内地ならが通人らしく話をしても他が承知しませんから駄目ですが、万が一こちらで誰か日本の御方でオペラを見たい人があったならばそんな人には中でも充分に説明が出来ましょう。近所の人には通じませんから。」
(中の人ツッコミ)
規矩士のオペラハウス第2回目はヴェルディの「運命の力」に行ったようです。このオペラはイタリア人のヴェルディ作曲なので、本来はイタリア語ですが、規矩士はドイツ語で題名を書いていますね。ひょっとして「ドイツ語」での演奏だった?
そして始めは教会の場面ではないので、ここは規矩士の何か思い違いかもしれません。どちらにしても規矩士はそんなにオペラには詳しくはないようです。
しかしオーケストラはやっていたので、こちらには関心が向くようです。昭和初期にはまだ珍しかったと思われるハープに興味津々のようです。
と、やはりパイプオルガンですね。この当時日本には本格的な大きいパイプオルガンはなかったので、こちらも興味津々です。
「大抵筋書(音楽譜つきの詳しいもの)」とは演奏会場で売られている「プログラム」のことでしょう。オペラは歌詞があるので、言葉が堪能でないと厳しいです。規矩士はこっそり「プログラム」を見ているみたいですが、日本人の規矩士がドイツ語のプログラムをこっそり見るのはそれなりに大変だと思います。
「日本語だと嬉しいですよね?規矩士先生!」
最近ではステージに字幕が出るようになったので、オペラ鑑賞も楽になりました。
規矩士第一回目のオペラ鑑賞はワーグナー、2回目がヴェルディと、オペラ界二大巨頭の作品を鑑賞したことになりました。ワーグナーとヴェルディは実は同い年。方やドイツオペラ、「楽劇」の創始者としてオペラに新しい様式を取り入れて刷新しました。方やイタリアオペラの伝統を守りつつ、こちらも新しい要素を取り込んで、オペラの発展に尽くしました。
最近の演出は、作曲された当時や、元のテクストにある時代、場所ではなくて、「読み替え」というものが流行。この動画の演出も読み替えされています。
このオペラは悲劇です。
「運命の力」といえば有名なこのアリア。「神よ平和を与えたまえ」
現代のディーヴァ、アンナ・ネトレプコで。(ロイヤル・オペラハウス)
余談ですが、ロイヤルオペラハウスは動画配信に熱心。流石に本番の映像は少ないですが、リハーサル映像を多くアップしてくれていて、いろいろと参考になります。
運命の力といえばこの序曲。イタリアが生んだ巨匠の一人、リッカルド・ムーティの指揮、ベルリンフィルで。(一部のみ)。場所はナポリのサン・カルロ劇場。ヨーロッパ現役最古の劇場なのだそうです。1816年(1817年と書いてあるものもあります)竣工。
これぞ「ヨーロッパのオペラハウス」という感じです。
やっぱりこの序曲はイタリア人指揮者のアグレッシブな音楽がピッタリだと思います。何なんでしょうね?DNAに刻まれた何かなんでしょうか?
【Why The Royal Opera love performing La forza del destino】
おまけ
フレッシュな「運命の力序曲」(後輩ちゃんガンバ!)←不肖の先輩より。