72. 昭和3年9月17日3 規矩士の兄、敬一の思い出3。「襟巻まだ?」「クロイツァー先生のレコード」の話。

故敬一兄ソナタは私の帰り次第発表します。私の全生命を打ち込んでも立派に演奏したいと思っています。

かなり以前の作故、美しいとまでには行きませんが、これによって彼の精神を御汲みとり願いましょう。清らかな一生を終わった、しかもあまりに気の毒である彼のために、これが私のすべき義務であると信じますから。毎日練習しております。」

(中の人ツッコミ)

ここの所、亡き兄。田中敬一の思い出が多く語られています。いろいろと思い出しているようです。

田中敬一はソナタを作曲していたようですが、今のところその楽譜は発見されていません。

 

「〇襟巻にはきっと魂がありますから、私を十分に守ってくれましょう。本当に熱い温かい御努力を感謝します。遅れてはいますが、いつも自分のなすべき本分をいたしておりますから、御安心下さい。一日も早く着くのを願っています。」

(中の人ツッコミ)

規矩士が襟巻を催促しています。すみこさんガンバレ!

 

〇こっちに来ると妙に今まで気付かなかったことが解り、欲しいものが多くなります。どうかまた申し上げます故。御迷惑でも聞いて下さい。笑ってくださるものかもしれませんが。

最近はもはや子どもになってしまいましたから、きっと無理を言うかも知れません。御母上様に本当に「困った人だ」と申し上げてもよろしくですから。

私に沢山に買ってな事を言わせてください。帰ってからどこかの人に叱られるのは承知しております。叱られても結構です。

〇習うべきもの、注意すべきものはいずれだんだんに言いましょう。筆の都合を見て。ドイツ語でもやりますか?こちらも未だ勉強中故、何も出来ませんが、単語を並べるならばなんとかやれましょう。単語の見本を出しましょう。

〇クロイツァー先生の御話しでは「アメリカで吹き込んだのが宜しい」とのこと。「ショパンソナタ。その他のは自分でも記憶せぬ」と。たしかに先生の吹き込みレコードにや(?)。一寸お伺いします。

先日も先生のレコード及び書物について日本の学生が勉強していることを話したら、大変に喜ばれました。新しいのもボツボツ見えるでしょう。

③生きたレコードはすばらしいものです。(クロイツァー)先生の音は猛烈な熱情的のものです。

学校もすぐ始まるので、忙しいでしょう。どうか尊い御母上様によろしく。沢山に語学の勉強には、感服します。何分よろしいように御勉強下さい。ピアノ練習も出来るだけ充分で、身体を害せぬよう御注意します。

〇なかなかいろいろのことで、忙しいでしょう。時間に隙が無いのはこちらも同様。反ってその方が身体のために宜しいです。先生になりましたか。大いにやってみてください。先生の気持ちがよくわかりましょう。先生は半分は生徒から習うものです。どちらが先生だか一寸わかりませんな。両方先生みたようなものでしょうか。箱の中にはさだめしあるものが満ちておるでしょう。」

(中の人ツッコミ)

「すみこが学生時代に少し生徒を教えたことがある」という伝承があります。そのことを言っているのかもしれません。しかしこの「教える」は学生をやりながらだったので、まだ「見習い」の域かもしれません。」

 

ポツダムはベルリン郊外の代表的なものです。また何か送りましょう。

〇熱海、伊豆いずれも大好きなところです。どうか名勝の絵葉書は時々拝見されて下さい。景色の葉書は殊に嬉しく拝見いたしております。帰ったら一緒に見物でもしましょうか。きっと面白いでしょう。

〇何かと御注意下され感謝します。適当と思うことに向かいます故、今から実行にかかります。(ドイツ語と思われます。筆記体なので読み取れず)