70.昭和3年9月17日2 「クロイツァー教授の熱心なレッスンに感動しています。」

「それから今一つは、私の先生でもあり、あなたの先生でもあるクロイツァー先生に何かクリスマスに贈りものをしたいと思いますが、何が良いですか?これは宅の方と相談していずれなりともよろしくお願いします。

私の考えでは置物か花瓶の類はどうかと思いますが、ただ、参考までに申し上げます。先生の床間によく何か飾られてありますので。御姉上様の画の方はいつにても宜しくございます。お忙しきに無理にお願いして、ご迷惑と存じまして。

猶、先生はどんな質問でも喜んで答えられます。いつもご親切を感謝しております。先生がお弾きになる時は、本当に感服します。何でも楽々にやられますので、こちらががっかりします。(中の人ツッコミ:驚愕!とか素晴らしい!とかいう言葉を入れたいです)

シーズンで先生の音楽会もボツボツ始まりました。いずれその時はまた何か申し上げましょう。お稽古など長い時は2日に分けて見てくださいます。時には一曲が2時間あまりの時がありました。そんな時はこちらもグダグダになります。それ程に御熱心です。

笈田氏は私を「人間にあらず」との酷評をくだされました。まことに有難い事と思っています。つまりあまりにカフェーとか活動(写真)とか酒、たばこ、カルタ(トランプのことか?)等を好まぬので、それやこれやで申されたのでしょう。何にしてもいろいろとご忠告下されまして感謝します。(中の人ツッコミ:うわー!皮肉!)

あるいは高折氏等を通じて何か稽古について話すかも知れませんが、事実はそうでないことを一言しておきます。(悪口の方で)

クロイツァー先生にはこれに反して温情でお稽古をして下さいます。こうも「人間が違うものか」とつくづく感じました。どうか温かい心を持ってください。私も最近はすっかり人が変りました。今まであまりに不親切であったことを、私は私自身で知るようになりました。」

 

(中の人ツッコミ)

クロイツァー先生に何かクリスマスプレゼントを考えているようです。「置物や花瓶はどうだろう?」と相談をしています。

この置物や花瓶は日本のものを想定しているのかもしれませんね。

そして規矩士はまたまたすみこの姉の絵を所望していらっしゃいます。

そしてクロイツァー先生が熱心に指導してくださるのを、規矩士先生はとても感謝していらっしゃいます。「1曲を2時間見てくださった」と感謝しています。

他のクロイツァー先生のことを書いた文章からも、クロイツァー先生は人種差別をしなかったとあります。この時代のヨーロッパはまだ人種差別がありました。日本人の生徒を差別する教師もいたと思いますが、クロイツァー先生がそのようなことをしたという証言はありません。

どの日本人の生徒たちも「熱心に教えてくださった」と言っています。

そして私の推測ですが規矩士を始めとする日本人留学生たちの熱心で真面目な勉強ぶりを見て、1933年、ナチス政権樹立でドイツに居られなくなったクロイツァー先生が、「結局日本に逃げて、永住し、そして日本人と結婚して、日本の土となった」という人生に繋がっていくのかなと思います。

 

そして笈田氏が規矩士の「堅物ぶり」をあーだこーだ言っています。別にどうでもいいじゃん!www。