⑲郵便配達夫も立派ですが、ここの巡査の立派なことは驚くほどです。巡査とは言っても内地に見る巡査にはあらずして名前だけの巡査で事実は兵隊と少しも変わりません。組織もきっと軍隊のようになっているらしいです。服装は多分写真で見られたかと思われますが、青色の洋服にヘルメット帽子をかぶり腰には短い剣を下げています。この剣は日本の兵隊の腰に下げるものと全く同じものです。その他にピストルを持っていますから(これは日本の憲兵と同様)初めて見るものは兵隊かと思います。私も初めて来た時にはそうかと思いましたが、兵隊と言われればなるほどとうなずかれるほどです。
すべて巡査君の身体は皆大柄で、隆々としていますところは、一寸内地とは異なっています。もちろんドイツでは戦後ある規約を守らねばならぬため、軍隊にも相当の制限はあるのでしょうが、軍隊の制限の代わりに巡査を軍隊の代わりとしている由、ある人から伺いました。自動車でそろって行く時などはなかなか立派です。本物の兵隊の方はどうかと言うに服装は各自のものなのですから、あらゆるハイカラが出来ます。日本なら散歩に軍服(?)位は平気でしょうが、一寸した固い場所に軍服でも大礼服はどうかと思います。大抵大礼服の場合は内地ならば三大節に限られていますが、これをもともと普通の儀式の時に着たとしたらばあまり大袈裟でむしろ滑稽の感がありましょう。
こちらではあらゆる場合(勿論大礼服はありますが、)通常福で事が足りています。何するによらず実用を主としているところですから、少しでも形式があるとそれは真に疲(?)します。食物でもその通り実用を尊びますので、皿数も少なく、一皿に沢山選んできますあまり、実用過ぎて、どの位栄養価があるかは一寸疑問ですが。あれも実用、これも実用。皆実用で通して行くところにまた、面白いところがありましょう。真に食物になりますが、こちらに来るとどうも食物が気になるもので。
軍服は黄色、巡査服は青色ですから、見てわかります。ここに妙なるはベルリンには交番所のないことで、どんな場所にも巡査はいますが、皆ブラブラ歩いているばかりで、立ち止まっている者はありません。交通巡査は別ですが、何故交番所がないものか、万一何か事件でもあった場合にはどうするかとこちらに来た者は、誰でもそう言いますが、何でもその時はどこでも構わずその付近の商店、あるいは普通の家に飛び込んで電話をかけるそうな。万事がこの調子で交番一つ建てるのにも経済を考え、実用を考えているドイツ人の頭の中が想像されます。ほとんど必要でない場所には形式的にも金を置くことは決してありません。内地ならば限定的にそこには少し残しているべきところでも、こちらにはなかなかをこには置きません。
電車の交差点等には全然旗振信号手なく、みな交通巡査君がこの任にあたっております。場合によっては何もないところがありますが、その時は両方で見合わせて走っています。それでも交通上何ら事故のないのはえらいですな。事故と言えば、どうしてあれだけいろいろの車の数が多いのに、割合に少ないのかと疑われますが、各自が相当に交通道徳を重んじでいるからにもよりましょうが、一つには道路がよく整理されているのも原因するのではないかと思いました。どこを歩いても道の悪いところは一つなく((?)はなかなかありますが)まるで石の上を行くようですから自動車も楽々と走ることが出来ましょう。
(中の人ツッコミ)
1930年のドイツの陸軍の行進。規矩士が見ている兵隊はこんな感じだったと思います。ネットで拾ってきました。
元ネタ
水兵正式制服。交通整理のため、左右にシャコー帽をかぶった警察官が随行している(1931年ベルリン)
元ネタ
ウィキペディアに詳しく書いてあります。
規矩士がいたころのドイツ、ワイマール共和国の軍服をオーダーメイドできるらしい。ミリタリーおたく殿が注文するのかもしれません。
(日本語が少し変なので、どこぞの国かもしれない)
交番は日本独自のものだそうです。しかし「日本の治安の良さは交番制度があるからかもしれない」ということで、最近では交番制度が輸出されたのだそうです。