23.昭和3年7月1日3 黒澤すみの東京音楽学校での演奏会。「家庭としての美しい柔らかな円満な心の勉強をいたしましょう」

◎総練習こちらもぞくぞくします。目の前に見えるようこちらに来ては皆さまの顔が見えないので失望します。実に良かったことと思います。Lau氏の棒、黒ちりめんの礼服及びはかま、それに金ボタンの選手たちが熱情をこめての演奏でしたから、その出来栄えそこそと思います。

Lau氏はラウトルップ先生のことでしょう。この年のラウトルップ先生は何の演奏をしたかしら?(例の東京芸術大学百年史を当たらなければ)

 

◎夢のようの話、こちらにもたくさんにあります。今では東京とベルリンが一か所になって自分でも判断がつかぬのもがあります。夢でもせめてもの慰めになります。

◎大会演奏実にうれしいことです。日本に私がいなくてもきっと大成功したと思います。何だかベルリンにも聞こえてきたようでした。大いに祝福いたしましょう。

◎この手紙を出す日がそれですから、自分でも心持ちが良くなりました。限らず私のために弾いてくれたことと感謝します。井口氏も次はするとか未来の各芸術の上に幸大からんことを希望します。」

(中の人ツッコミ)

この「大会演奏」はこのことだと思います。

1928年(昭和3年)7月1日学友会春季演奏会に出演。ベートーヴェンピアノソナタ作品90(27番)第1楽章を演奏。(『東京芸術大学百年史演奏編第二巻』(1993)に掲載。)

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黒澤すみ(のちのたなかすみこ)がこの演奏会出演のことを規矩士宛の手紙に書いたのだと思います。ベルリンにて規矩士が祝福しています。良かったですね。

この演奏会には井口基成も出演しているのですが、すみはそのことは書いていないのか?それとも「井口さんは次回は何かするみたいですよ」と書いたのか?それとも井口基成自身が何かでキャンセルしたのか?わかりませんね。規矩士のお返事は「井口氏も次はするとか」です。

 

◎リウマチスとのこと、心配(?)私が帰ればきっと治りましょう。いろいろの夢の中で何程南京虫の夢は秀逸です。そのころは仰せのごとくとてもやられます。一晩は征伐で寝られない時がありました。いつもメンソレータムが助け舟です。

 

◎どうかたくさんお勉強下さい。家庭としての美しい柔らかな円満な心の勉強、これがこの2年間の宿題でしょう。私も素直な心の勉強をいたします。ピアノ以外に(?)最も大切なこの勉強を決して忘れないように願います。いかにピアノを良く弾こうともこの心が欠けたならばそれはとるに足りません。御母上様、御姉上様にならい、家庭の人としての勉強を私は心から願っています。きっとそうしてください。

皆々様いよろしくご伝言下さい。さよならー。」

(中の人ツッコミ)

規矩士先生、「ごちそうさまです」♡♡♡。

私にとって規矩士先生とすみこ先生の結婚は、「一目ぼれをしたすみこ先生が猛アタックして強引に結婚した」というイメージがあり(先生ゴメンナサイ)規矩士先生がどう思われていたのかよくわからなかったのですが、この言葉で確かに規矩士先生がすみこ先生と「暖かい家庭を作ろう」と思われていたことを知りました。良かった。

なんだか心がほっこり暖かくなりました。

翻刻を許可くださった黒澤家の方々に感謝します。このことを知ることが出来て、弟子だった私はとってもうれしいです)

 

おまけ

一時期Twitterで話題になった記事をまとめたものです。深いですね。

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