8.昭和3年5月16日3 フレデリク・ラモンドの演奏会に行ったけど、ベルリンに到着したら演奏会はそろそろシーズン終了のよう。

「これでしばらくは音楽会はないように言っていますが、万一また何か良いものがありましたならば、プログラムをお送りいたしましょう。

ホッホシューレ(中の人注:ベルリン高等音楽院のことだと思います)のオーケストラはあまりに上手とは思えませんでした。内地でしたならこれからが盛んだろうと思いますが、こちらは冬の寒い時がシーズンですから、それを外すと当分は良いものが聴かれません。

内地の方はさだめし「ベルリンは毎日良い音楽会で賑わっているんだろう」と思われますが、(私も始めはそう思っておりました)決してそうではなく、ただ賑わっているのは素人の音楽会ばかりで、これでは勉強になりません。

故、参りませんがこうした音楽会ならば市内のレストラン、カフェ位でも毎週2,3度はやっていますから、コーヒーでも飲みながら聴けば聴かれます。

何しても日本ではカフェ位と言いますが、こちらのは日本の専門家以上ですから、全く驚いてしまいます。ピアノ等、実によく弾きますから、勉強するのがいやになります。

プログラムは1枚日本金の10銭位します。これなどは日本の音楽会とは別物でしょうか。買うなどとは思いもよりません。」

(中の人ツッコミ)

ヨーロッパのオペラ劇場、コンサートシーズンは大体秋から5月6月ごろが1シーズンです。夏はヴァカンスシーズンなので、○○音楽祭としての興行です。ザルツブルグ音楽祭、ワーグナーのオペラを上演するバイロイト音楽祭、イタリアのアレーナ・ディ・ヴェローナ、イギリスのBBCプロムスなど、著名な音楽祭が華やかに行われます。そして夏はサマーセミナーの季節。クロイツァー教授もベルリン郊外のポツダムで、サマーセミナーをしていましたね。

規矩士は4月あたりにベルリンに到着されているので、確かに「そろそろシーズンオフ」という感じであったらしい。

 

カフェで気軽な演奏会はいたるところであったようです。規矩士は「日本の専門家より上手かも」と驚いています。レベルが違ったのですね。

同封されていたプログラム

1928年4月21日。会場は「ジングアカデミー」

このホールは「ベルリンジングアカデミー」という音楽団体(元は合唱団)の本拠地ホールとして1827年に建てられたそうです。現在はこんな感じらしいです。スクロールすると出てきます。このホールでメンデルスゾーンの「バッハのマタイ受難曲復活上演」がされたそうです。ベルリンはメンデルスゾーン所縁の土地でもあります。

4travel.jp

リストの夕べ。

1928年4月21日 ベルリンジングアカデミー

フレデリク・ラモンド

フレデリック・ラモンド - Wikipedia

プログラム(オールリストプログラム)

ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178/R.21 A179
伝説 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ S.175 R.17
超絶技巧練習曲 第11番「夕べの調べ」 S.139/11 R.2b 変ニ長調
2つの演奏会用練習曲 小人の踊り S.145 R.6
超絶技巧練習曲 第3番「風景」 S.139/3 R.2b ヘ長調
超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」 S.139/5 R.2b 変ロ長調
即興ワルツ S.213 R.36
超絶技巧練習曲 第10番 S.139/10 R.2b ヘ短調
巡礼の年 第2年「イタリア」 「ペトラルカのソネット 第104番」 S.161/R.10-5 A55
3つの演奏会用練習曲 「ため息」 S.144/3 R.5 変ニ長調
「ポルティチの唖女」のタランテッラによるブラーヴラ風タランッテラ(オベール) S.386 R.117

 

このコンサートのピアノはベヒシュタインでした。

(重量級のプログラム。ロ短調ソナタなんて30分以上かかる大曲。弾く方も聴く方も体力勝負!)

ラモンドの演奏。この曲はコンサートでも演奏されました。

【リスト :2つの演奏会用練習曲 小人の踊り S.145 R.6】

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【リスト :超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」 S.139/5 R.2b 変ロ長調

こちらの曲も演奏会で演奏されました。

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こちらの曲はプログラム最後の曲。

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プログラム(チラシかも)の裏。おそらくレコード会社の広告。

 

(余談)

コロナ禍以来、世界中で演奏会の配信ということが行われるようになりました。この配信というものに熱心なのがポーランドショパン協会。ショパンの生家でのコンサートは世界中にリアルタイムで配信されるようになりました。時差があるので日本では夜ですが、家のベッドでゴロゴロしながら演奏会を楽しむのはちょっとした至福のひととき。

第1回ショパン国際ピリオドコンクール第2位の川口成彦さんの演奏。ピアノは現代のピアノではなく、ショパン時代のピアノを使用しています。

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ショパンの213歳のお誕生日コンサート@ワルシャワもリアルタイムで配信がありました。アーカイブされています。こちらもじっくり聴きました。

2010年のショパン国際ピアノコンクールの覇者(第1位)ユリアンナ・アヴデーエワさんの演奏。

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いつかポーランドに出かけてリアルで楽しみたいです。

コンサートを遠い日本の自宅のベッドの上やリビングのパソコンで楽しむ。規矩士の時代には想像も出来なかったことでしょう。