81.昭和3年10月3日4 オペラハウスにて。ベルリンの国立歌劇場の様子を書きました。

27.でたらめでも誰も笑ってくれる人がありませんから、今度の時は誰か連れて行って故意で内地の訳本を読んでおいて説明してやります。ドイツ語で読んだつもりで。わからないところは都合よく作曲して説明しておきます。それでも先方はきっと感心するでしょう。どうもえらい説明者がありますもので。

オペラ劇場は日本と異なり、幕間に何か物を食べることです。これはこちらの人の性質として仕方はありませんが、どうも少し変に見えてなりません。それが我に共の上等の場所(意味が通じないが?)ならばいざ知らす。どこでもですから、一寸驚きます。中には大きな袋を広げて召し上がられますから、こちらでもたまらなくなります。いつも匂いだけをかいでは満足していますが、誰も私にくださる人はありません。時にまだ袋に残っているのが気になりますが、決して無駄にはせず、きちんと包んでまた持って帰られます。まことにに細かいところまで行き届いていますから、驚きます。今度は私も何か持って行こうと思っています。たくさんに匂いをかがしてやりましょう。

やはり上等の席ではオペラグラスを必要とすることは内地も変わりません。私の席はとても上等過ぎて反対に天井の絵を見る方がはっきりしています。上等席はどこでも変りませんもので。

こちらには立見というのがあります。私のはそれの一つ上等ですから、大して変わりませんが、本当に立見とは名前通りで、3時間も4時間でもそのままに棒立ちにいるのを考えると気の毒です。何でも少しも多く見ようというご連中だそうで、なかなか御熱心な感心な人たちです。私共にはとても3時間以上立って見ることは出来ませんが、皆、疲れた顔も見せず、一生懸命に見ていられますから、ますます感服させられます。人のことはそんなに言いますが、自分の席は殆どそれと同様ですから、あまり悪くか誉めるか言えませんけれども、私共のような熱心家は皆、こういう上等席におられるのが当然でしょう。

大抵の日は日本人は私一人で代表しています。しかも特別席におりますので、心強く思います。音楽会とても同様。まあ日本人では私位がいつも行く方でしょうか。

オペラの内部は帝劇と少しも変わりません。今の帝劇よりは昔の帝劇に近いでしょう。天井も昔の帝劇そっくりです。4階まであることも同様。

席には自分だけが掛けるので、帽子なでその他のお伴はかけられません。どうしても防止、外套は預けなければならず、これは内地と少し違いましょう。内地ならばあるいは中に持ち込んでも良い場合がありますが、こちらではそれは絶対に駄目です。

帝劇式に中にレストランもありますが、あんなコテコテしている他の店はありません。幕間は長くて15分。大体10分位でしょう。その間に食べる人は食べ、飲む人は飲みそうでない、我々共のような人はポカンとしてその10分間なりを休みます。

幕の開く時までには予鈴が四度鳴ります。さすがドイツ式に用意が濃厚です。まごまごしているうちにいつか暗くなって幕が開きます。まるでこの辺は停車場の汽車のようです。停車場では合図なしに汽車が出ますから。だらだらお話を続けます。サヨナラ。」

(中の人ツッコミ)

ドイツでのオペラハウスの様子を手紙にしました。規矩士が行った「ベルリン国立歌劇場」の様子でしょう。

幕間で「何かを食べる」のは歌舞伎座国技館での相撲見物では何か食べますよね?それと同じでは?と思うのですが。

規矩士は「クローク」に戸惑っています。日本で演奏会場に「クローク」が出来たのはいつ頃だろう?中の人は東京では「サントリーホール」が最初では?と思っています。へ?って思った記憶があります。

そしてヨーロッパのオペラハウス(歌劇場)には立見席というのがあります。この立見席は安価なので、「毎日通いたい」熱心なファンや若い学生御用達です。日本人留学生でも「オペラハウスの立見に毎日通った」という思い出を語っている方が大勢います。

ネット検索をかけたら、かなりの量の「立見席に行った」という体験談が出ました。どういう訳か圧倒的な量で「ウィーン国立歌劇場」のものでしたが。

happy-yoppy.site

上のサイトでは4ユーロと紹介されていた立ち見席ですが、急に大幅値上げをしたようで、以下のサイトでは19ユーロになっていたそうです。今(2023年)は円安ユーロ高なので、もっと高価になってしまっているかも!

mottokoushitara.com

立ち見席に関しては、現代ではウィーンもベルリンもそんなに変わらないかと思います。

規矩士がいたころのベルリンと現代ではどうなんだろう?中の人の推測では「極端に変わった」とは思えませんが。

現代のオペラハウスでのシートマップ。

【劇場によってこれだけ違う!?ヨーロッパのオペラ鑑賞チケット座席を選ぶ3つのポイント(2021年)】

musik-travelers.com

中の人は「ボックス席」にちょっと憧れがあります。

musik-travelers.com

戦前の帝国劇場。

www.ndl.go.jp