昭和3年11月

97. 昭和3年11月5日1「すみ君へ」1 「ライオン練り歯磨きがほしい」「「昭和天皇の即位の祝賀演奏会」

(規矩士の手紙の箇条書き系の手紙、主に『すみ君へ』となっているすみこ宛の手紙ですが、あまりに話題が飛び過ぎなので、こちらで編集作業をすることにしました。つまり書いている順番の入れ替えをします。話題の一つ一つに番号を振りました。元の文章は番…

98.昭和3年11月5日2「すみ君へ」2「ベルリンはだいぶ寒い」「ラフマニノフのコンサートに行く予定。楽しみです!」

(続き) 4.ベルリンも寒くなりました。相変わらず元気です。例のチースの家です。他には理想の家もないので我慢しましょう。スチームが通りますから暖かです。 27.近頃は日もだいぶつまりました。4時半になると暗くなります。11月3日の天長節はベルリン…

99.昭和3年11月5日3「すみ君へ」3 規矩士の芸術論 「その時代に合った演奏をするのが良いということに結論されましょう」

(規矩士ベルリン便りに戻ります。) 9.ロンドは見かけによらない難しいものです。 橘先生のお話、何程以前はその通りです。 けれども時世は決して同じではありませんから、もちろん演奏法も違ってきます。現代のもまた、後世いつか革命の時期にあるかもし…

100.昭和3年11月5日4「すみ君へ」4 雑談

16.皆様によろしくとはこちらからで、決してその御心配なく。熱田丸と同船の人は、あるいはケンブリッジからドイツの方に来るかもしれません。黒澤氏は消息不明です。 20.ケンブリッジに行かれた御方は矢野という人です。多分只今はロンドンにいると思いま…

101.昭和3年11月5日5 ベルリンフィルハーモニーの話1。演奏会場フィルハーモニーホールの話。

ベルリンで一番大きな音楽会場はフィルハーモニーで、ここで演奏される人は特別に技術の優れた人です。場所はポツダムプラッツ(中の人注:ポツダム広場)ジングアカデミーとはかなり離れています。幸いこのポツダムプラッツまで私の下宿のそばから地下鉄道…

102.昭和3年11月5日6 ベルリンフィルハーモニーの話2。フルトヴェングラー指揮ピアノはラフマニノフのコンサートはチケット代が高額!

「フィルハーモニーはベルリンの好楽家からはあまりその建物が古臭いとて良く言われませんが、私の聴いた所では決してそうではないと思いました。何程最下席になると随分横のうしろの方なので、「あれでは」とうなずかれますが、最下席の一つ上等から正面に…

103. 昭和3年11月5日7 ベルリンフィルハーモニーの話3。民衆音楽会。フィルハーモニーの前売りチケット事情。

かかる立派な会の(中の人注:ラフマニノフだのフルトヴェングラー指揮だのというビッグネームのコンサートのこと)以外に日曜の夜7時半から民衆音楽会があります。 これはやはりフィルハーモニーのメンバーですが、指揮者が普通の人なので、入場料もずっと…

104. 昭和3年11月5日8 ベルリンフィルハーモニーの話4。ブルーノ・ワルター。フィルハーモニーホールの話。

先日はブルーノ・ワルター氏コンダクター(中の人注:指揮者)のオーケストラを聴きましたが、(勿論日曜日の午前11時半から1時半までの総練習)この日のは合唱付きと言うので大変な人でした。総練習をする音楽会は大抵よろしいので、従って入場料も高くなっ…

105.昭和3年11月5日9.ベルリンフィルハーモニーの話5。「ベルリンフィルのティンパニは不思議なくらい上手なのです」「パイプオルガンは至る所にあるから珍しくないです。」

ティンパニ(普通鉄太鼓などと称しています)も2組あって(つまり4個並べられます)それが同時に叩かれますから全く気持ちが良く、時にはティンパニだけのソロがあったりして実に愉快です。内地ではよく高折氏(中の人注:高折宮次氏のこと。東京音楽学校ピ…

106.昭和3年11月5日10 ベルリンフィルハーモニーの話6.合唱付きのコンサートに行った。「某氏がヴァイオリンをやめたのももっともなことです。」

合唱付きのオーケストラには、かなり多くの人が出演しました。女声合唱にドームの子どもの合唱が加わり、近頃には珍しい面白いものでした。合唱人数は全体で250人位だったと思います。それに大勢のオーケストラが伴うのですから、その賑やかなこと、さしもの…

107.昭和3年11月5日11 ベルリンフィルハーモニーの話7。ゲネプロの時の服装とか。団員はクローン先生のような男性ばかりです。

「オーケストラの感じ、音の具合等、筆ではちょっと言えませんから、いずれ帰国次第に詳しく申し上げることにして、ここでは目に見えたことをお話しすることにします。 総練習の時はオーケストラの部員の服装は通常服で、これは上野と変わりません。先日の合…

108.昭和3年11月5日12 ベルリンフィルハーモニーの話8。うなるオーケストラの話。

何もわからない我が同胞諸君の中でのある人があの8つのコントラバスを聴いてすっかり感心してしまい、 「まるで飛行機のプロペラがうなっている様だ」と申されました。 全くその通りです。うなると言うのが本当に当たっています。普通に鳴るのではなく、その…

109.昭和3年11月15日1 ベルリンのホール事情

ベートーヴェンザール(中の人注:ザールとはドイツ語でホールのこと。)は横浜記念会館を少し大きくしたくらいで、聴くのには丁度良いホールでしょう。相当の人は皆、以上に上げた(ジングアカデミー、フィルハーモニー、ベートーヴェンザール)ホールで演…

110.昭和3年11月15日2 規矩士はラフマニノフの実演を聴きました!! 1

ラフマニノフ氏の独奏会は8日の金曜日、フィルハーモニーで開かれました。 この日は時間の都合で少し遅くなりましたので、自動車で飛ばしましたが、良い具合に間に合いました。(自動車についてはまた面白いことがありますが、紙面の都合でお預かりとします…

111.昭和3年11月15日3 規矩士はラフマニノフの実演を聴きました!! 2

(中の人注:ラフマニノフの演奏会の曲目について。) 今、左に記すとまず第一が バッハ-ブゾーニ:Zwei Orgelchoral-vorspiele 【Bach-Busoni - The Complete Nine Chorale Preludes】 www.youtube.com (中の人注:バッハーブゾーニ:9つのコラール前奏曲…

112.昭和3年11月15日4 規矩士のリスト論

日本でリストをやる者は、こと一番主眼とする神々しい荘厳なる音については少しも注意を払われぬことです。かかる人のリストは、リストの音を巧みに出すだけで、真実のリストを弾くものではなく、それをもって完全にリストが弾けたと思われたら「大間違い」…

113.昭和3年11月21日 すみ君へ1 郵便料金、「2年はすぐ経ちます。こちらにいてもあまり早いのでがっかりします。少しも長くいたいものです。」

「すみ君へ」 (すみ君への手紙は思いつくままに書いているので話題がまとまっていません。なので中の人が編集をしました。番号は元の文章の順番を示しています。つまり番号をたどれば元の文章になるという仕掛けです。) 1.いつも原田様からいろいろとお世…

114.昭和3年11月21日 すみ君へ2 いろいろな話題。

2.私のすることもすべて夢の国、あるいは詩の国であると思います。御先輩から見たならば全くその通りです。決してえらい事は言えません。どうか私より以上の御両親様のご注意を沢山に受け入れられることを希望します。それが私のお願いです。 3.世の中は自分…

115.昭和3年11月21日 すみ君へ3 奏楽堂のパイプオルガン。東京音楽学校の話題。ベアトラム氏とは?オペラは苦手?真の芸術家とは?

4.奏楽堂にもオルガンが出来て面目を保てました。このオルガンは徳川様の時でも調子の点で閉口しました。三寸は本物のものはとても素敵です。 5.学校の方には、出来るだけ通信します。日本でも一生懸命に勉強すればドイツなど、決して負けないと思いますから…