昭和4年1月
(婚約者すみこへの手紙は「すみ君へ」としてありますが、規矩士が思いつくままに書いているので、話題があちこちに飛んでいます。こちらで編集をしました。元の記事は番号を追っていくとわかる仕掛けになっています。 いよいよ1929年昭和4年です。 1929年1…
3.原田様もいよいよ英国を経て米国に渡り、7月5日に横浜に着きます。船は「サイベリア丸」で、今からお仕度で忙しくしていられます。その日は金曜日ですから多分学校があって駄目でしょうが、万が一暇が出来たならば、私の弟と共に迎えられては下さらない…
4.今年度の新しい留学生の御方が来られたならば、大いにお世話をしてあげましょう。音楽学校では誰でしょうか?早く決まればその御方に御便利をお計りしたいのですが。 (中の人ツッコミ) 規矩士先生、次にいらっしゃるのは規矩士先生と親しい方ですよ。お…
6.気候は今のところ華氏の0度以下、12度位のところで、ますます寒くなるばかりです。(中の人注:これは摂氏の間違いでないかと思います。華氏0度とは摂氏氷点下17度となってしまい、さすがにベルリンでその気温はないかな?と思います。)室内は感心に暖か…
どれもこれも良いものばかりで何から話して良いか困ります。 日本でお馴染みのジル=マルシェクス氏をベヒシュタインザール(ここではあまり良い人はやられません)で聴きましたが、ベルリンではどうも他に沢山に良い人があるので、日本で感じた程ピンときま…
ベルリンの演奏会場には内地のようにおちついたものは一つもないので、いつもそれだけが欠点だと思っています。場所はとても大きくて立派ですが、少しも落ち着きがありません。というのはステージの構造が違うからにもよりましょうが、あまりにごちゃごちゃ…
「なお、先日は久しぶりでクライスラー氏の演奏をフィルハーモニーホールで聴きました。いずれプログラムをお目にかけますが、なかなか素晴らしいものでした。ブラームスのヴァイオリンコンチェルト(中の人注:ブラームス作曲ヴァイオリン協奏曲Op.77) で、…
規矩士は【伯林新報】なる新聞のような手紙を書くことにしたようです。これは書かれている文面から、いつも日本の新聞を送ってくれる黒澤家の人々に「ベルリンでの生活を新聞形式で書いたら面白いかもしれない」と考えたようです。 この後【伯林新報】と書い…
『伯林の寒さは決して苦しいものではありません』 内地で想像する程に寒くないことです。 最も4月以来、慣らされていますから、そう感じるのですが、今、急に入伯(中の人注:ベルリンに来ること)されてはあるいはとても寒く感じられるかもしれません。「音…
【伯林新報2-1】 ベルリン到着の4月中の天気の日は7日間だけ。他の日は曇りか、雪降り、或いは一時晴れくらいのところでした。4月中(11日、23日、24日、25日、28日、29日、30日。以上晴天)寒さは未だ冬。外套を着て丁度良い程でした。この次には5月の天…
◎『タクシーは内地に比べて非常に安いことです』 いわゆる円タクなるものはとても安いことです。内地のものに比べても半額の感があります。こちらは油(中の人注:ガソリンのこと)が非常に安いので、そうだとの話でした。いくら安いとても我々にはやたらと…
◎『日本字で書かれてある商店を見るとなつかしくなります』 市内を歩いている時、どうかすると日本文字で「薬局」とか、あるいは「男女理髪所」とか「日本の御方様には特別に勉強いたします」とか等、いろいろの文句を見るたびに、何となくなつかしくなりま…
◎「話の種」 イ.ベルリンには犬が多いので、またそれにともなう副産物もなかなか大きいのです。 昼間はまだ良いとしても夜分等、少し暗いところではよくグシャリとやりますが、これにはいつもほとんど閉口しています。先日は危うくその副産物の上でダンスを…