昭和3年10月

78.昭和3年10月3日1 「規矩士先生がいないと淋しいわ」

すみ君へ 各地の絵葉書嬉しく拝見しています。帰ったら是非行きたいところばかりです。ベルリンの住所はあれで上等ですが、詳しく書けば。(画像で出します。筆記体なのでわからない) 以上のようになりますが、どんなに書いても大使館さえあれば必ず来ます…

79.昭和3年10月3日2 マフラー使います。テクニックの勉強をしてくださいね。お料理頑張って(また言ってる笑)ハサミの謎。原田教授にはお世話になっています。その他近況報告。

②早速襟巻を利用します。おかげ様で温かい心が包んでくださるので、急に気持ち良くなりました。寒い時には毎晩のように夜半に目が覚めます。そして犬や猫のように身体を丸くしないと震えますから。スチームが通るまでは却って寒いでしょう。 〇入浴は大抵1週…

80.昭和3年10月3日3 オペラハウスでヴェルディの「運命の力」を見ました。

26.いよいよシーズンで、ますます賑やかです。外は寒いので震えますが、この辺りは一寸内地と違います。内地ならば気候の良い頃かそうですが、こちらは寒くなればなるほど良くなるのですから、だいぶ変わっています。 先日は第二回としてヴェルディのDie Ma…

81.昭和3年10月3日4 オペラハウスにて。ベルリンの国立歌劇場の様子を書きました。

27.でたらめでも誰も笑ってくれる人がありませんから、今度の時は誰か連れて行って故意で内地の訳本を読んでおいて説明してやります。ドイツ語で読んだつもりで。わからないところは都合よく作曲して説明しておきます。それでも先方はきっと感心するでしょ…

82.昭和3年10月3日5 フォイアマンとザウアーのリサイタルに出かける。フィルハーモニーにも出かける。(すみこが「早く帰ってきて!」と手紙を書いたようです。お返事www)

〇鎌倉の絵葉書は思い出深く懐かしく拝見いたしております。毎日慰められております。 〇同封の赤切符はフィルハーモニー、黄切符は地下鉄道のものです。 (中の人注:ベルリンフィルハーモニーのチケットはありましたが、黄色い地下鉄の切符は散逸してしま…

83.昭和3年10月13日1 原田親雄上田繭糸専門学校教授にお世話になっています。

『すみ君へ』① ハサミは本当に使用して下されば本望です。御礼はいりません。ダンケシェーンは勿論それがなくてもきっとご使用の事と思います。 〇愛に対するえらいご意見を伺いまして、少し恥ずかしくなりました。つまり宇宙はすべて夢から出来ています。私…

84.昭和3年10月13日2 東京音楽学校の校長が変わったこと。ピアノの一日の練習時間。

〇音楽雑誌にはベルリンの本当の様子がわからないので、さきにいって何かを知らせましょう。それまでに充分調べるつもりです。 新校長はどんな人か知りませんが、いずれ何か話してみる考えでいます。学校もますます良くなって嬉しいです。私が帰る時分にはき…

85.昭和3年10月13日3 橘糸重先生について。(婚約者すみこの先生)

〇橘先生には特別に御親切、私も嬉しく感じています。先生も、すみ子女史に対しては私との将来の何事も知られているようで、先日も先生から特にすみ子女史について話されました。誰が言うか全く見当がつきません。私も橘先生にはよろしくいたしております故…

86.昭和3年10月13日4 演奏会に行くのに忙しい。「豊増昇くんと井口基成くんはどうしていますか?」

〇仲良しのお友達の事件、ちっとも心配はいりません。その御友達が自分の衣服のように身体から離れないならいざ知らず、そうでなければ何とでも独りで行くことが出来ます。そのお友達にわざわざ「行きます」と言う必要はありません。言ったことがいろいろの…

87.昭和3年10月13日5 ベルリンジングアカデミーのホール

28.ジングアカデミーとはやはり内地ならば日本青年館というようなところで、場所は私がしばしば行くオペラのすぐ前。丁度大学の裏にあたります。場所としては静かな良い所でしょう。ここには立派なパイプオルガンがあります。すべてこういう場所にはパイプ…

88.昭和3年10月13日6 クロイツァー先生のトリオを聴いて。規矩士のトリオ論1

「クロイツァー先生のトリオは音楽会シーズンの最初のもので、初めてベルリンに来て音楽会らしい良い気分に浸ることが出来ました。到着当時、ラモント氏の演奏を聴きましたが、こちらが未だ慣れないせいかあまり面白く聴くことが出来なかったのは遺憾でした…

89.昭和3年10月13日7 クロイツァー先生のトリオを聴いて。規矩士のトリオ論2 「やはり自由に表現できるまでテクニックは必要」

よく内地で「あの人はただ、テクニックを主として感情を表さぬ、まるで機械だとか、あるいは感情がさっぱりない、情熱がゼロ等言われる方を耳にしますが、内地でテクニックの非常な立派な人と言ったら悲しくも未だそれだけに立派な方は(これは甚だ失礼な言…

90.昭和3年10月13日8 クロイツァー先生のトリオを聴いて。規矩士のトリオ論3

話はだいぶ脇に逸れましたが、以上の三氏の御演奏は実にテクニックにおいては全く性格その字通りでした。まず第一の要素、曲譜を間違える(悪く言えば「ごまかす」と言う方が当たりましょう。一寸の引き違えはこれは氏方がありません。私の申し上げる間違え…

91.昭和3年10月13日9 同封されていたチケットの半券たち1(ザウアー、オルロフ、ベルリンフィル、バロコヴィッチ)

10月13日付けに同封されていたチケットの半券の数々。 ①1928年10月4日 フィルハーモニーホール エミール・フォン・ザウアー 曲目不明。 ですが、10月3日付けの手紙でこのコンサートのチケットのことが言及されていました。規矩士は 「黄色のはザウアー氏ピア…

92.昭和3年10月13日9 同封されていたチケットの半券たち2 (ボロフスキー、スレザーク、バロコヴィッチ)

①1928年10月13日午後8時開演 ベートーヴェンザール バッハとリストの夕べ ピアノ:アレクサンダー・ボロフスキー(1889-1968) Alexander Borovsky - Wikipedia (日本語のものはありません) こちらのCDの紹介にかなり詳しい経歴があります。 sakuraphon.net …

93.昭和3年10月29日1『すみ君へ』クロイツァー先生のレコード、南京虫、演奏会三昧満足。日本で行った演奏旅行の話。など。

10月29日1 『すみ君へ』 「ポリドールレコード以外にアメリカのレコードでショパンのソナタがある由。何でもこれが一番良いとか申されました。何のレコードか先生も忘れたそうですが、どこかで探したらあるかも知れません。レコードと生とはだいぶ違います…

94. 昭和3年10月29日2 手紙の税金。敬一兄の墓所、橘糸重先生から手紙が来たようです。クロイツァー先生はブリュートナーがお好み。

〇ドイツはなかなかやかましいので、一時のことでも税を取ります。御仰せにより申し上げますが、幸い手紙にはこれまで何もありませんでしたが、新聞ではドイツ郵便局がやかましいせいか、時折不足分を要求するなどあまり細か過ぎると思いました。別に大した…

95.昭和3年10月29日3 敬一兄の思い出。ピアノカタログを送った。婚約者すみこの楽しいイタズラ。ドイツの新聞に秩父宮殿下の写真が出ましたよ。

〇思い出の葉書を見る度に昔のことがはっきりと浮かんで一層忘れられなくなります。悲しみが新になるのは、何としても仕方がありません。忘れようと努力していますが、その度に自分というものがあまりに浅はかであったことがつくづくと見に染みて時に変な気…

96.昭和3年10月29日4 同封されていたチケット類

10月29日の封筒に同封されていたチケット類。 これはコンサートチケットではなくて、どこかの入場券? Zooと書いてあるので、動物園かな? 「10月16日火曜日9時から15時まで」中等? ちょっとわからないですね。(ドイツ語苦手。得意な人にそのうち聞いてみ…