27.昭和3年7月8日2ベルリンでの日々の暮らし。ドイツ人と日本人の体格差。下宿の話。

⑩体格でもそうですが、内地の女の方の体格はこちらに来ている人で言うとまるで半病人のようです。よく大使館や料理店で会いますが、身体が妙に前に曲がっていることで、何程こちらの人が「病人だ」と言うのはもっとものことだと思いました。洋服と身体とがきちんと合っていません。そのうえに歩き方がだらしなく肋骨は一枚一枚に見えるのですから、まことに痛切にお気の毒になります。そういう自分たちはまたいたるところで支那人と間違えられるのですから、男女を通じて日本人は今少し身体に覇気があってもよいと思います。人種の違うのは仕方がありませんが、自分もこちらに来てはじめて身体の外人に劣るというのがよくわかりました。あまり悪口を言うと皆様に叱られますから、この辺で止めておきましょう。内地でデブデブの人がこちらでは丁度具合がよろしいです。外見にはどこでもそうですが、あまりひょろひょろした人は見えません。((?)い事はありません。時々は見えますが)身体の小さい人はかなり多いですから、私も安心しました。」

(中の人注:支那人とありますが、原文を尊重してそのままの表記としました。差別を助長するものではありません)

 

今でこそ日本人も栄養状態が良くなったので、大柄になりましたが、昭和初期はやはり日本人とドイツ人では体格差が今よりもっとあったでしょう。

規矩士曰く「日本人女性は前かがみ。姿勢が悪い」と言っていますね。何故でしょうか?戦前にはそういう文化があったんでしょうか?

2022年のサッカーワールドカップ、日本対ドイツの試合、日本人選手とドイツ人選手の体格にあまり差がなかったように思いました。もしあの試合を規矩士が見たらどう思うでしょうか?

【ドイツ - 日本|グループE |2022 FIFAワールドカップ カタール|ハイライト (実況なし)】

https://www.fifa.com/fifaplus/ja/watch/3xzUoi1m1dUsdVQTpd3br7

 

体形がシビアに評価されるバレエの世界でも、日本人ダンサーが海外で活躍しています。規矩士が知ったら大層驚かれると思います。

letsballet-55.com

 

 

「新下宿は一番下の室ですから、今度は良いだろうと思いますが、未だわかりません。当分の内、様子を見たうえでお返事いたしますから、こちらから何とも通知がないうちは大使館に願います。大使館までは割合に時間がかかりませんから時々回りましては御通信などをもらってきます。先日、新下宿の住所を書きましたが、詳しく左に記しました。

Berlin.W.50(Schönebeug u Wilmersdorf.)Regensburger str28(bei Frau Kaese)

こんなに長い文句になりますが、伯林W50 シェーネベルク レーゲンスブルガー シュトラーセ28(フラウ ケーゼ)とお書き下されば間違いはありません。シェーネベルクとかウィルマースドルフとかはちょうど内地では何々区というのと同じで、W50は郵便の配達区を表していますから、これだけを御書きになれば安心です。町の名前でも区が違っていて同様のものがあります故、一寸御注意いたしておきます。例えば蒲田御園のが、大森御園というようなことです。シェーネベルクとウィルマースドルフにまたがる所のレーゲンスブルガー町と大変うるさく言うのです。

郵便配達区と普通の区とを限らずお忘れにならないでこれでは先日も友人を案内して大失敗をしました。

(フラウ ケーゼのケーゼはチーズということですから、甚だ面白い名前があるわいと先生も笑われました。フラウ バター、フラウ カフェーはないかなと言っていました)

街の名前にベルリナーstrというのがありますが、一寸区を間違えると約半里位の差がありますから、よほど注意をせぬとえらいことになります。すまして一方のベルリナーstrを案内して後で気が付いて他のベルリナーに戻るなどとはあまり関心した話ではありませんが、それだけ区が広いと言うことも証明していることで、この時は先方からお目玉を頂戴しました。何しろ半里もあるのですから、うっかりすると日が暮れます。」

 

先日あった本当の話。

「半田といえばそうめんよね」「え?半田にそうめんってあったっけ?あそこはミツカン創業の地だったり、赤レンガ倉庫だったり、新見南吉の生まれた所よ」

最初の半田は徳島県の半田、あとの半田は愛知県半田市。話がかみ合わない訳です。

こんな話は世界中にあるのだと思います。

【半田手延べそうめん共同組合】

handasoumen-kumiai.jp

www.handa-kankou.com

「今日は近頃になり暴風があり、そのために教会の塔が少し曲がった所がありました。風で塔が曲がるなどとは本当とは思えませんが事実、多分らしいとの話でした。何だかあまり心細い話で、もしもこの上に地震でもあったら、一度にペシャンといってしまいましょう。自分などは今度のは一番下の室ですから、万一の場合にはとても助かりません。2階にいる人の足音がしたでミシリミシリ聞こえますから、気持ちがよくありません。だいぶ暑くなりましたが、未だ蚊は一匹も出ません。そのかわり例のものがいますから、同じことでしょう。今日等も暴風のために急に温度が下がって非常は寒さとなりました。冬服がどうも離せません。いずれまた 失礼。」