71.昭和3年9月17日2 何かありましたか?

② 皆にすまぬようなことをして何と言ってよいか。これに対してお詫びする言葉も知りません。どうか私が帰る時は今までの人間ではありませんから、それだけも善くなったと思って私を見てください。今はもう夢中で勉強しています。あまり人が変わっていやになられはしないでしょうかな。いろいろの事件は皆、私をより良くしてくれます。こうしてだんだんに善くなっていくのを心から嬉しく思っています。そちらでも十分に御修養ください。すべて柳の木が風になびく如く、決して角があってはなりません。人に反抗する前にまず自分をしばらく考えてみることでしょう。それからでもしか言う事があったならば、遅くはないでしょう。自分を考えるだけの暇を持てる人はたしかに幸福です。私の言う事を聞いて下さるならば、少なくともあなたに接するすべての人にそのようにありたいと思います。私だけが人間でもなく、また私だとて決して正しい者とは自分でもそこまでには至りません故、私より御先輩の御方に万事を御依頼するようにつとめてください。

何度も申し上げますが、一番近いのは御両親様の御命令、これを中心としてあらゆる者には話して下されたく。私も毎日人間となるに必要な心の勉強を怠りなくいたしております。心の上に築かれる芸術こそ真の芸術であることを決して忘れてはなりません。この話はこれで終わり。また、折を見て申し上げましょう。

〇毎日があまりに早く過ぎるようで、驚きます。8月中はどこにも出ず、家に居りました。宿探しで忙しくしました。先方でも折れて出ましたから、当分はここに居ることになりましょう。毎日(?漢字が読み取れない)過ぎます。音楽に書いても結構です。ハガキも書きましょう。いずれなりとも出来るだけのことをします。健康故御安心下さい。そちらはいかが?お転婆をうんとやられる度、おとなし過ぎるのは反って健康の毒。

(規矩士先生、何かありましたか?)