38.昭和3年7月29日5 「すべての信仰は偉大な神の声、音楽から与えられるものがまた非常に多いということも忘れてはならない」

⑯讃美歌でも歌いようによっては良くもなるし悪くもなるから、日本にもこの位の良いものがあったならばどれだけ多くの人が好きになったろうと考えられます。日本式にあんないやな声でしかも無理に有難たがらせて信仰に引き入れるようにするのは私でも本当に嫌だと思いますが、こちらのように何にも知らない人が何だか有難いような気がしますね、と言われた時はどれだけ音楽の力がその人をある方面に導くかということが(?)かん分かりました。すべての信仰は勿論説教を聞くことにおってもあるいは得られましょうが、それよりか偉大な神の声、音楽から与えられるものがまた、非常に多いと言うことも忘れてはならないと思います。

(中の人ツッコミ)

こういう音楽を聴いたり演奏したりすると、とくにそう思います。

J.S.バッハ作曲『ロ短調ミサ曲』

 

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(サムネにもなっている黒髪のソプラノ歌手、ハナ・ブラシコヴァさんはバッハコレギウムジャパンソリストでもあるので、よく来日されます。何回か実演にも接しました。)

ヨーロッパではこういう風に教会でコンサートが行われる伝統があります。現在も、そして規矩士がベルリンにいたころもこういう演奏会が多かったでしょう。バッハは身近にこうやって聴けるものだったと思います。

【バッハ カンタータ4番BWV4】

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(この曲も歌ったです)

 

バッハ、ベートーヴェンショパン、なんと各大家の楽曲に触れる旅にいつもある信仰が頭に浮かんできます。それは口に語るにあらざして、自然の響きとして頭にピンときますが、その瞬間は何も忘れて全部がその中に吸い込まれるようになります。そこはまた偉大な力、魂があるのではないでしょうか。少なくともこちらに来た者はほとんどへ何もわからぬ者でも音楽の素晴らしい事位はわかるようになって行くのも、ある音楽芸術の偉大なる力がまた大であるということを記憶しても良いと思いました。自分がこの道をやっているから何もかもそうでなくてはならないと言うのではなくて、事実、こちらの良いものを聞かされては誰もがたまらなくならざるを得ないでしょう。方面の違った方にはいろいろのお話を伺いますが、皆、同じような事を申されます。ベルリンに来てせめて聴くことだけでも良いから、好きになってくれたら、それはその人のとっては、大なる進歩となった事になります。先日も留学生の御方にお目にかかり、いろいろのお話を伺いました。自分は日本では音楽のオの字を聞くのも嫌だと言っていた者だが、こちらに来てはあまりにそれが立派な(?)あに、どうして嫌どころかとても好きになってしまったと私に話されました。

 

また、これも某海軍教授(?)ですが、自分は日本で音楽隊の廃止になったことを非常に遺憾とする、何故廃止にしたか(或い小部分のものを残して他は廃止になったるはしばらく以前のことでした)少なくともこれからの軍人は音楽によって訓練されねばなるまい、普通一般に音楽は男のものでなくて女の所有物のように考えているのは大なる誤りである。

なぜ女の所有物か、音楽を知ったらその兵隊は弱くなるか、そんな馬鹿な話はない。

第一男には音楽の必要を認めぬと言う御連中が今時未だ沢山にあるから、悲観すると言っていられました

また、ドイツの軍隊を見よ、あれだけ戦争に強かったのは、軍隊に音楽がなかったのか。否、とても素晴らしい音楽を以ていたために(もちろんそればかりではありませんが)あれだけに持ちこたえることが出来たと極力全部を音楽の力として話してくれましたが、私も本当にそうだと思いました。音楽はその人を弱くするものにあらざして却ってその人をして信仰を強くするものだと思います。ところが世間にはどうも(?)(?)者が多いためにとかく多くの非難を受けて困ります。自分もその脱線者の一人ですから、強くは言えませんが、何にしてもドイツのような全部が音楽から生まれた国は別として日本も将来ますます正しい音楽が一般に普及されるように希望してやみません。」

 

昭和初期の日中戦争から太平洋戦争のあの時代、「音楽は男子の仕事ではない」とか「東京音楽学校で音楽を学ぶキリギリス」とかいろいろと難癖をつけられました。「男子一生の仕事ではない」と親に反対されたのを押し切って東京音楽学校に入学してきた学生もいました。

現在でも音楽大学は女性が多いです。

しかしとくにピアノは19世紀後半の男性を基準として作られていて、女性にはやはり厳しいものがあります。そして勉強する曲の作曲者も男性。

どう考えても「男性の方が有利」です。

(中の人は女性だからくやちい(^^ゞ)

それなのに何か勘違いをして「トンチンカン発言」をする人は昔ほど多かったと思います。

 

反田さん、かてぃんさんなど、YouTubeというものを使って世界中に配信する男性ピアニストたち。規矩士はやはり「草葉の陰」から応援するかなと思います。

 

我田引水

【Josquin Des Prez ジョスカン・デ・プレ Missa Pange lingua ミサ「パンジェ・リングア」全曲 合唱団スコラ・カントールム】

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(私の声もどこかに入っています)

15世紀から16世紀に生きたジョスカン・デ・プレの作品は、規矩士がベルリンにいらした昭和初期、ベルリンで演奏はされていたんだろうか?

日本ではほぼないと思います。カトリックの宗教音楽ですが、これも「宗教音楽」という分野の傑作の一つです。

「規矩士先生、100年後の日本では、こういう合唱曲を歌う団体もたくさんあるんですよ(*^-^*)」